2019年7月30日の夜、ある企業公式ツイッターアカウント担当者が突如「7月31日を以って中の人を卒業する」と宣言した。パソコンメーカー「ASUS」(エイスース)のゲーマー向け製品ブランド「ROGJapan(RepublicofGamers)」だ。宣言前までは平常通り運用しており、ツイートには「色々整理がついておらず、どのようにご報告したらよいか悩んでいた」とある。「卒業」の詳しい経緯は明かされていないが、担当者の動揺が汲み取れる。公式アカウントのこうした突然の卒業は、J-CASTトレンド記者から見て決して珍しいとは言えない。ROGJapan担当者は静かに最後の1日を過ごすと思っていたが――。競合他社までもが「怒られてもかまわない」「ROGさんが中の人を卒業されるとのことで、あまりにも突然で何か出来ないかなと考えてたんですが、がんばROG#がんばROGとエールを送ってトレンド入り出来ないかなと・・・」7月31日、治験に関する情報発信を行う「インクロム」の公式アカウントがツイッター上でこう呼びかけた。「がんばROG」とは、ROGJapan担当者が日ごろ挨拶ツイートに使っていたフレーズだ。すると、ROGJapan担当者と親交のある多くの企業公式アカウントが反応。ハッシュタグ「がんばROG」をつけて次々に投稿開始した。直接知り合いではない企業アカウント、一般ユーザーまで動きが伝播し、さらにはROGJapanの競合他社にあたる「ASRock(アスロック)」や、GIGABYTEのゲーミングブランド「AORUS(オーラス)」までもがツイートでエールを送った。「ASUSROGJPさん今日で卒業かぁ。戦友がまた一人去ると思うと寂しいものですな。中の人のこれからも#がんばROGでよろしくお願いします」(ASRock)「私にとっては先輩でありライバルであり戦友(とも)であるASUSROGJPさんに、今までの感謝と今後のご活躍への期待を込めて、みんなで#がんばROGと一緒にエールを送ろう!#怒られてもかまわない」(AORUS)結果、「#がんばROG」はトレンドワード6位にランクインした。中の人が残留する可能性を作りたくて8月1日、記者はインクロムのツイッター担当「マスクマン」を訪ね、「トレンド入り」を狙った理由を取材した。ROGJapanとは、今年3月12日に居酒屋チェーン店・つぼ八が主催した、企業公式ツイッター担当者22人によるミニ四駆大会「つぼ八杯(カップ)」で参加者同士として深く関わり、苦楽を共にした仲だと明かした。「卒業宣言を受けて本当にショックでした。何とか『北側物産』さんのようにカムバックの可能性が作れたらいいなと思い、『つぼ八杯』で知り合った仲間たちを中心に連絡を取ったのです。思った以上に動きが広がり、一般のツイッターユーザーまで参加してくれました。ROGJapanさんが日ごろからコミュニケーションを丁寧に取っていたからこそだと思います」「北側物産」とは大阪にあるゴルフ用品やスポーツカジュアルの卸売会社だ。同社のツイートをさかのぼると15年6月、「ツイートが緩すぎる」という理由で会社からツイッターアカウントの停止指示を受けたが、多数の企業公式や一般ユーザーがハッシュタグ「北側物産」でつぶやいた結果トレンドワード入りし、その効果でアカウント停止は回避され、今現在も運用している――という経緯が分かる。マスクマンさんの願いはかなわず、2013年から約6年担当していたというROGJapan担当者は、7月31日夕方に最後のツイートを残して卒業。ただ「がんばROG」がトレンドワード入りしたスクリーンショットを投稿し、「ちょっとまって、みんな最後に中の人を泣かすのやめてもらっていいですか」と感謝を綴っていた。
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