2019年 11月 20日 (水)

「過剰適応」のあなたへ 名越康文さんが授ける最強の「対抗呪文」

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   Oggi 10月号の読者相談「名越康文の奥の『ソロ』道」で、精神科医の名越さんが、他人の目を気にしすぎる「過剰適応」についてアドバイスしている。

   相談の内容はおおむねこんな感じである。

《いつも笑顔で聞き上手...職場ではすっかり「癒しキャラ」の私ですが、人の話は半分くらいしか聞けていないし、周りを気にしているから終業後はぐったり。心の中で毒を吐きまくっています。周囲に人格を決められ、流されていく自分はこの先どうなるのか...》

   名越さんは、よく聞く悩みだと受け止め、そういう人に共通しているのは、日本人に多い「責任感が強くて真面目な性格」だと説明する。そしてそれは「過剰適応」であると。

「相手の求める自分を演じ、失望されたくないと思うが故に、自分らしさを抑えつけて他人に合わせようとすることで、必然的に自分の外面と内面でズレが生じて苦しむことになります。しかもこのしんどさの原因を本人は理解できていないことがほとんど」

   実はこれ、子どもの頃から言いたいことを言えない環境に育つとなりがちな状態で、脱却するには自身が「直そう」と自覚するしかないそうだ。

   治療法は難しくない。まずは週末に半日ほど「ひとり」で過ごすことである。

「近所の公園でも、カフェでもいいです。ベンチに座ってゆっくり読書するとか、音楽を聞きながら深呼吸するとか。その時間は自分の頭の中から他人を追い出すのです」

   仕事のことはもちろん、家族や友人のことも考えてはいけない。「ひとりも楽しいな」という成功体験を毎週末、ただ重ねていくのだ。

  • 周りを気にしてぐったりしていませんか
    周りを気にしてぐったりしていませんか

ひとりで過ごす訓練を

「こういう経験を蓄積していくことで、『人に合わせないと不安』とか『人から嫌われると生きていけない』と深刻に考えすぎる、過剰適応の症状が弱まってくるはずです」

   誰かが再び、自分の性格を決めつけるようなことを言ってきたら、胸中で「あなたにはそう見えるんですね」「本当の私は違うけどね」「あなたが知らない面もあるんだよ」とつぶやいてみる。口に出せば差し障りがあるから、あくまで心の中で。

「これは相手の呪縛を解く対抗呪文になります。長期戦略として数カ月ほど、この呪文をつぶやくことで失った自信を少しずつ取り戻し、ひとりで過ごす訓練をしたら、きっとのびのびと自分を謳歌できるようになるはずです」

   Oggiは小学館の女性誌。ターゲット読者は30代からのキャリア女性で、ファッションや美容、結婚、男性俳優などの企画が多い。

   名越さんの人生相談には、毎号「もう『おひとりさま』は、こわくない!」の副題がつく。職場でひとり悶々としている読者の悩みに、優しくこたえる体裁である。

空気を読みすぎる社会

   「過剰適応」について、名越さん自身が解説した文章を「女性自身」のネット版で見つけた。投稿は昨年11月、概略は以下の通りである。

〈日本人の2~3割が該当するとされる。まわりの顔色(環境)が気になり、それに合わせようとするあまり、自分を押し殺してしまうこと。幼少期に、親と無条件の信頼関係を築けなかった、あるいは思春期のトラウマから立ち直れないなど、別の理由があることが多い。長く続くと、リラックスをつかさどる副交感神経のパワーがなくなり、心身の緊張から解放されなくなり、自身をさらに追い詰めてしまう。私は大丈夫と決めつけず、息苦しいと感じたら自分を気にかけ、ケアを始めてほしい〉

   私もその傾向があるので分かるが、「良い子」を演じ続けるのは疲れるものだ。学校なら友だち関係、社会人なら日々の職場生活や自身の評価にも関わるので、不用意に「素」を晒すわけにもいかない。自然と定まった「キャラ」に沿って振る舞うほうが楽なのだ。

   しかし、外面と内面とのズレは次第に精神を蝕み、やがては心身の不調を自覚するに至る。男性より、社会的制約が多い女性に発症が多いらしい。

   みんなが空気を読みすぎる、と言われるこの社会(時代)である。大切なのは周囲の評判より自己の充実感や達成感...これに気づくのは早い方がいい。ふだんサービス過剰のあなた、時には「自分ファースト」やっちゃいましょう。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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