2021年 9月 24日 (金)

風が吹いている 水野良樹さんは五輪をめぐるバラバラをそのまま書いた

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追体験できる構成に

   難産で生まれた「風が吹いている」は、水野さんの思い通り、2012年の紅白で歌われる。いきものがかりのメンバー3人のうち水野さんと山下穂尊さんは男性だが、ボーカルの吉岡聖恵さんが女性のため紅組での出場、それも初のトリを飾ることになる。途中、五輪の映像が挿入され、日本人メダリストたちがステージに立った。水野さんのこのエッセイは、そんな成功譚の序章を自ら振り返ったものである。

   周知の題材を当事者が書くのは、意外に難しい。本人の記述はすべてホンモノ、オリジナル、誰からも文句は出ないのだが、中身は心境の吐露に終始しがちである。その点、水野さんは「NHKホールを望める代々木公園のベンチ」に始まり、「独り暮らしのアパートに帰った若者がコンビニの袋から弁当を取り出し、テレビをつける」といった想像部分を含め、記述がなかなか具体的だ。「ボサボサの頭を掻きながら」といった表現もある。

   〈風が吹いている 僕はここで生きていく 晴れわたる空に誰かが叫んだ ここに明日はある ここに希望はある〉...そんな歌詞と、あのメロディーが、どういう試行錯誤と苦吟の中から生まれたのか、読者が追体験できる構成である。

   昨今は民放も、夏冬の五輪のたびにテーマソングを用意する。今年の東京五輪ではどんな曲が名場面のBGMとして残るのか。もう一つのメダル争いに注目したい。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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