2020年 7月 14日 (火)

天才モーツァルトが珍しく書き直した 「弦楽五重奏 第1番 KV.174」

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毎日酷使する現代人の目にビルベリー由来アントシアニン!

   作曲家は作家と同じく頭の中で作品を作り上げ、それを楽譜に書き付けていきますが、やはり楽譜になってからも、文字の小説などと同じように推敲の作業は必要です。そこで軽微な修正だけでなく、大規模な改変や、後に改作をしてしまう作曲家も少なくありません。

   そんな作曲家の作品の場合、同じ1つの作品でも原版、改訂版、再改訂版・・みたいな形で残されるので、後世の我々は「どの版を演奏するか」が難しい選択となってきます。

   そんな中にあって、「楽譜に書きつけるときはすでに完璧。すべて頭の中で曲を完成してから、譜面に向かう天才」と評されたW.A.モーツァルトが珍しく「書き直した」作品を、今回は取り上げましょう。弦楽五重奏曲 第1番 Kv.174です。

  • モーツァルトが13歳の頃、イタリアで書かれたといわれる肖像画
    モーツァルトが13歳の頃、イタリアで書かれたといわれる肖像画
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低音のチェロではなく「中音域」のヴィオラを増やす

   弦楽五重奏、というジャンルは少々特殊です。弦楽室内楽の完成形にして理想形ともいわれる弦楽四重奏、ヴァイオリン2台にヴィオラ1台、そしてチェロ1台という編成にもう1つ弦楽器を付け加えるわけですが、実は作曲家によって違い、ヴィオラをもう1台加える場合と、チェロを1台加える場合に分かれています。コントラバスを1台加えることもありますが、音域のバランスからごく特殊例です。

   モーツァルトは、弦楽四重奏にヴィオラを1台加えました。そして彼の「弦楽五重奏」はすべてこの編成、すなわちヴァイオリン2台、ヴィオラ2台、チェロ1台で書かれることになります。その出発点としても「第1番」の意義は大きかったと言えましょう。モーツァルトは、低音のチェロを増やすことを選択せず、ヴァイオリンとチェロの間の「中音域」を受け持つヴィオラを増やしたのです。実は、モーツァルトは、この決して目立たない楽器であるヴィオラの扱いがとても上手く、交響曲などの他のジャンルに於いても、ヴィオラに重要な役割を割り当て、とても良い響きを生み出しています。ヴィオラを増やして五重奏にする、というのは彼にとっては当然の選択肢だったのかもしれません。

   ただ、もう一つ、ヴィオラを増やしたもう一つ明確な理由がありました。同じ編成での五重奏を書いた身近な人がいたのです。有名な「ハイドン」ことウィーンやハンガリーで活躍したフランツ・ヨーゼフ・ハイドンの弟で、モーツァルトの故郷ザルツブルクで活躍したヨハン・ミヒヤエル・ハイドンが、同じ編成の弦楽五重奏を生み出していたのです。

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でプルミエ・プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目のCDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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