2024年 4月 26日 (金)

学術研究の有効性を示す

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■『コロナ危機の経済学 提言と分析』(小林慶一郎・森川正之編著 日本経済新聞出版)

   循環的な不況、金融危機、災害など、経済ひいては我々の生活は様々な出来事の影響を受けている。伝染病というショック、それも世界規模に及ぶ大きなショックは、久しく経済が経験したことのない事態である。いきおいその対応策は手探り状態からはじめるほかないのであったが、それでも、学問を体系的に用いることで、どのように感染症対策と経済の両立を図るか、その影響はどのようなものとしてあらわれ、どのように対処するのが望ましいのか知見の蓄積が進められている。

国際的な標準化の進んだ経済学

   経済学はその手法の国際的な標準化が進んでいる分、今回のような世界規模のショックに対してどのように対応するのが望ましいのか、世界で同時並行的に研究が進められている。このような研究の成果を参照することで、すばやく理に適った知見と対応策にアクセスすることができる。

   本書『コロナ危機の経済学 提言と分析』は、政策的な志向を持つ、我が国における一線の経済学者による、コロナ禍の影響と対策についての研究の進捗状況をとりまとめたものである。進行中の事柄を扱う性格上、暫定的な研究が多くなるのは当然であるが、ここに集められただけでも重要な示唆を与えてくれる。例えば、一橋大学の佐藤主光教授は、第4章「コロナ経済対策について」で、コロナ禍が不可逆的な経済変化を生むとの見通しに基づき、企業支援は原形復旧を志向するものではなく、廃業支援を含め構造転換を促すものとすべきと提言している。菊池・北尾・御子柴の各氏による第15章「新型コロナ危機による労働市場への影響と格差の拡大」では、コロナ禍が社会の脆弱な層により深い打撃を与えることを示唆し、今後の対応の必要性を指摘している。森川正之経済産業研究所所長による第17章「コロ危機と在宅勤務の生産性」は、在宅勤務の生産性が習熟を経て上昇したことと同時に、同僚や取引先の在宅勤務が自身の生産性の向上に資するという外部性の指摘を行っている。これらの事態の早い段階での研究は、引き続き進行する事態のなかで、対応策を調整していくのに極めて有益である。

経済官庁 Repugnant Conclusion

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