鬼滅の難読ワールド 渡辺静晴さんはヒットの底流に日本語熱を見る

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ほどよく、ややこしい

   「校閲至極」は毎日新聞の校閲記者が交代で書いている。この「遊牧民」で前回(2019年9月)採り上げたのも、何のご縁か渡辺さんの回だった。

   日本語ブームというものがあるとすれば、SNSの普及と無関係ではなかろう。

   だれもが発信者として「小さなメディア」になれる時代だが、それにはパソコンやスマホに文字列を打ち込む作業が要る。これほど多くの人が日々なにかを「記している」時代はなかった。憂鬱や薔薇を子どもが平気で「書ける」状況も初めてだろう。

   書き言葉としての日本語を皆が意識し、深奥な漢字世界を隔てるハードルも低い。かくして大人も子どもも、鬼滅の難読ワールドを攻略できてしまう...凄まじい現実である。

   鬼滅が広く国民に受け入れられた背景として、渡辺さんはまさにその点を挙げる。いかにも2020年の、この国ならではの現象だろう。あらためて日本語の、ほどよくややこしい世界に「全集中」で浸かるのもいい。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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