2024年 3月 30日 (土)

心を整える くどうれいんさんは「雨に打たれてずぶ濡れになれ」と

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   anan(6月23日号)の特集「癒しの法則 2021」に、作家のくどうれいんさんが「雨に濡れろ」と題する短文を寄せている。特集にある「心を整えるエッセイ」の1本で、くどうさんのほかに最果タヒさん、花田菜々子さんが寄稿している。

   「雨に濡れろ」は比喩ではなく、傘もなく大雨の中に身を置くことで、悲観や不安を洗い落とそうという、過激かつユニークな提案である。

   コロナの日々を労わる冒頭は、「行けない、会えない、はしゃげない日々を、一年以上よくがんばってきたと思う...何とか自分のご機嫌をとり『ご自愛』するため、いろいろな方法を試してみた人も多いのではないだろうか」という調子だ。

「『ご自愛』だけじゃ世界は変えられない。しかし、世界を変えようと発奮するにもエネルギーが必要だ。心躍ることのほとんどが『不要不急』とされてしまう日々でエネルギーを蓄えるためわたしは提案する。雨に濡れよう! もう一度言う。雨に濡れるのだ」

   特異な発想のベースには、くどうさん本人の体験がある。数年前、就職活動が大失敗した帰り道で大雨に遭ったそうだ。ちなみに彼女は現在26歳である。傘の用意はなく、やけくそついでにリクルートスーツで2キロ歩いて帰宅した。下着や鞄までずぶ濡れだ。

「それが想像以上にきもちが良かった。最悪すぎたのだ。最悪すぎる心情と現実に、大雨はこれ以上ないくらい寄り添ってくれた」
  • 時には雨に濡れてみるのも
    時には雨に濡れてみるのも
  • 時には雨に濡れてみるのも

悲観や不安を砕く

   くどうさんは続いて「大人が雨に濡れる方法」を説く。

   雷雨ではない大雨がいい。着衣はTシャツかパーカー、水分をよく吸い、じっとり重くなる素材がお勧めだ。足元は乾きやすいサンダル。傘を持ちながら差さないのは傍目に不自然だから、スマホや時計とともに雨具は置いて出る。雨中に飛び出したら、不審がられないよう、急に降られて慌てる人のふりをする。

   そして、人目の少ない場所に行ってからが本番である。

「ゆっくり歩いたり、時々天を見上げたりして、降る雨を存分に堪能する。頬や手の甲に直接雨が当たるのは、おそらく、皆さんが想像している以上にきもちがいい...びっしょりと服の色が変わるまでの間、存分に自分のことを悲観するのがいい」

   「もうおしまいだ」「どうとでもなれ」と思った頃合いで、体が冷えすぎないうちに帰路につく。すっかり重くなった服を脱ぎ、熱いシャワーを浴びる。

「きっとあなたは(うっわー!)と思うだろう...からだを貫くような温かさに、悲観や不安や苦悩はすべて打ち砕かれる。『生きているなあ!』と思うだろう」

   できれば家を出る前に風呂に湯を張り、ビールを冷やしておく。「いやー最悪だ最悪だ! やんなっちゃうぜ!」と笑いながら、ほてった体にビールを流し込むのだ。

「ずぶ濡れの後ろ歩きでも進めばそれでいい。時々は雨に濡れて、未来が、世界が、わたしたちをちゃんと前向きにしてくれるかどうか、みんなで見てやろーぜ」

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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