2024年 4月 20日 (土)

東京は「パラレルワールド」 五輪とコロナ、別々の世界に

   新型コロナウイルスの勢いが増す中でなかで、東京五輪が始まった。緊急事態宣言で、都民には自粛が要請されている。選手たちの行動も「バブル方式」。外部との接触が厳しく規制されている。コロナと五輪が、都民と選手が分断された状況を、まるで「パラレルワールドのようだ」と指摘する声も出ている。

  • 国立競技場はじめ、都内の五輪競技各会場は無観客で開催されている
    国立競技場はじめ、都内の五輪競技各会場は無観客で開催されている
  • 国立競技場はじめ、都内の五輪競技各会場は無観客で開催されている

同時に並行して存在する別の世界

   「パラレルワールド」とは同時に並行して存在する別の世界のことだ。漫画やアニメ、映画などではしばしば登場する。

   五輪は本来、開催地の人たちの積極的な協力によって大いに盛り上がり、選手たちとの絆を深めてスポーツのすばらしさを世界に発信するものだった。ところが2020年初からのコロナ禍でいったん1年延期になり、さらに開催年の今年になってもコロナは収まらない。日本では頼みの綱のワクチン接種が不十分なまま、開催に突入することになった。

   こうした状況について、コラムニストの小田嶋隆さんは、すでに今年5月の日経ビジネスの連載で「『ショー・マスト・ゴー・オン』という悪夢」と題し、「なんだかパラレルワールドのできごとみたいだ」「私は夢を見ているのだろうか」と書いている。

   5月上旬段階では、緊急事態宣言で映画館などは休業を要請されていた。しかし、聖火リレーやマラソン試走など五輪イベントは敢行されていた。小田嶋さんのコラムはそのことへの違和感をつづったものだが、現在の東京の状況にもすっぽり当てはまる。

医療現場とのズレ

   こうした思いは、コロナ禍で医療関係を取材してきた担当記者にもあったようだ。朝日新聞の荻原千明記者は6月4日に書いている。

「コロナ禍が収まらないこの1年、東京都内の医療機関や保健所を取材してきた。コロナ専用病棟の看護師や救急の医師に現場の切迫ぶりを聞き『この状況で東京五輪に協力できますか』と尋ねた」
「答えは決まって『(五輪に)人を出すなんて考えられない』。私自身、現実離れした質問だと思いながら水を向けてきた。コロナ対応の現場と大会準備の動きには、パラレルワールド(並行世界)のような隔絶を感じてきた」

   医療現場と五輪とのズレ――その調整の産物が「無観客」だった。今や「五輪はテレビで見ましょう」と呼びかけられている。

   東京の新規コロナ感染者はこのところ激増し、8月上旬には過去最高の1日3000人近くになるという専門家の予測も出ている。都民にとって五輪は、会場で選手と感動を分かち合うものではなく、画面を通して見るだけの「遠くの出来事」になっている。五輪スポンサー企業の中でもTVの五輪広告を自粛する動きが出ている。選手村でコロナ感染というニュースが、皮肉にもコロナと五輪のつながりを再確認させる。

メディアが責任果たさず

   東京五輪の異例の状況については、元NHK記者のジャーナリスト、森田浩之さんがメディアの責任も追及している。6月23日」に「東京五輪の暴走に、何もしなかったメディアのことを忘れない」と書いている。

   五輪をめぐる問題は、数えきれないほどにあるが、「その大きなもののひとつは、開催の是非をめぐる議論について、メディアが本来の役割を果たさなかったことだ」という。かなりの国民が五輪開催に疑念を持っていたにもかかわらず、メディアの対応は不十分だったと厳しく指摘している。

   「パラレル」という言葉には、「もう一つの」という意味合いもある。時事通信によると、パラリンピックは「パラレル(もう一つの)オリンピック」と言われ、障がいのある選手による世界最高峰のスポーツ大会である。生まれながらにして、あるいはけがや病気が原因で、目や手足などに障がいがある人たちの中でも、各競技・種目で厳しい条件をクリアしたトップレベルの選手が出場する、と説明している。

   公明党の山口那津男代表は7月18日、パラリンピックについては「できたら有観客で」と語っている。

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