2024年 4月 19日 (金)

コロナワクチン「3回目接種」 イスラエルの決断がもたらすインパクト

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   毎日のように新型コロナウイルスの新しい情報や動きが報じられている。中でも世界的にみて、大きな関心を呼んでいるのは、イスラエルが3回目のワクチン接種に踏み切ったという報道だ。

   コロナとの闘いが、新しい局面に入ったことを象徴している。世界の先陣を切って「ブースター」を決断したイスラエルとはどんな国なのか。

  • 日本では2回目の接種が済んでいない人が多い
    日本では2回目の接種が済んでいない人が多い
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政府が「2回ではダメ」と判断

   エルサレム共同電によると、イスラエルは8月1日から60歳以上の市民に3回目のワクチン接種を始めると発表した。ワクチンの3回目接種は「ブースター」と呼ばれている。それが必要なのかどうか、専門家の間でも判断が分かれていたが、政府レベルでイスラエルが決断した意味は大きい。感染力が強いデルタ株に対抗するには、ワクチンは2回ではダメだという結論が出たことになるからだ。

   共同電によると、イスラエルでは、7月28日までに人口の約57%に当たる約530万人が2回接種を完了した。ただし6月以降、ワクチンの感染予防効果が低下し、1日の新規感染者数が最近は2000人を超えた。デルタ株の広がりによるものだった。

予防効果低下の調査が続いていた

   このところイスラエルからは立て続けに、ファイザー製のワクチンの効き目が、デルタ株には弱いという調査結果が発信されていた。

   米CNNは7月5日、イスラエル政府が、米ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンについて、6月6日時点での感染防止効果が64%と、5月に報告された95.3%から大幅に下がったことを明らかにしたと報じた。

   さらにブルームバーグも7月23日、米ファイザーのワクチンについて、感染力が強いデルタ変異株に対する感染予防率は39%にとどまると報じた。これはイスラエル保健省が7月22日に発表した内容を伝えたものだ。6月20日から7月17日に行われた調査に基づいている。

   今回の「3回目接種」というイスラエル政府の決断は、こうした直近のワクチンとデルタ株に関する調査結果を踏まえたものと見られている。

「ハイテク先進国」

   日本から見ると、パレスチナ紛争の当事国というイメージが強いイスラエル。実は世界的には「ハイテク先進国」として有名だ。

   『知立国家 イスラエル』(文藝春秋、2017年刊)によると、国民1人あたりのノーベル賞受賞者数、博士号保有者数、教育費、特許数、ベンチャー起業数、研究開発費(対GDP比)などが世界トップクラスだという。


   たとえば、インテル製CPUの8割以上、「グーグル」のいくつかの機能も、イスラエルで開発されたもの。パソコンの「ファイアーウォール」やドローン技術、監視カメラが不審人物を自動的に検出する人工知能フィルター、小型胃カメラなどなどもイスラエル発だという。「もう一つのシリコンバレー」という感じだ。

   その背景には、第二次世界大戦後にロシアや東欧から高学歴移民を受け入れたのをはじめ、世界各国からの移民がもたらす「パイオニア精神」があるという。著者の米山伸郎さんによると、現数理系の才能をもつ若者を選抜する超エリートプログラム「タルピオット」「8200部隊」などもイスラエルのIT立国を支えているという。

   イスラエルは世界屈指のサイバー大国としても有名だ。『サイバー戦争の今』 (ベスト新書)はその詳細を伝える。著者の山田敏弘さんはサイバー武器メーカー、NSOグループの本拠地も訪問している。同社は500人ほどの従業員を抱え、うち半数がハッキングに特化した製品に携わるエンジニアだという。

国を挙げてファイザーに協力

   グーグル、アップル、マイクロソフト、インテル、フェイスブックといった名だたるグローバル企業が次々と進出して研究開発拠点をつくっているイスラエル。中東の緊張から、先端兵器開発にも余念がない。とにかく米国との結びつきが強い。

   コロナに関してイスラエルは、国を挙げて、ファイザー社のワクチン開発に協力してきた。「フォーブス」によると、ファイザー製ワクチンの有効性を確かめる大規模な「試験場」になっていたという。イスラエル政府はその実地データの提供と引き換えに、ファイザーから早い段階でワクチンを大量に確保、接種も進んでいた。

   いわばファイザーワクチンの優等生だったイスラエルが、世界に先んじて「ブースター」に踏み切っただけに衝撃は大きい。「ハイテク先進国」だけに、早々と、「次の一手」に突き進んだ感がある。

   26日ロイターは、世界的に感染者が増加している状況を踏まえて、「デルタ株が覆すコロナの概念、規制社会に逆戻りも」という記事を配信した。「デルタ株は最も感染スピードが速く、適応力が高い一番手ごわい敵であり、各国が規制解除や経済再開に動いている最中で新型コロナ感染症を巡る概念を覆しつつある――。これがウイルスや伝染病の研究者の見解だ」と伝えている。

   日本でも、東京などで異次元の感染急拡大が進んでいる。TBSの報道によると、ワクチンを担当する河野大臣は30日、「X JAPAN」のYOSHIKIさんとツイッター上で対談し、「ブースター接種」の必要性について、「日本もたぶんどこかで3回目を打つことになるんじゃないかと思っている。たぶん来年なんだと思う」と述べたという。

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