2024年 4月 20日 (土)

池袋暴走事故で90歳に実刑確定 高齢受刑者を収監? 刑の執行停止ある?

   東京・池袋で2019年4月に起きた暴走事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)に問われていた旧通産省工業技術院の元院長(90)について21年9月17日、実刑判決が確定した。歩くのもおぼつかない様子がテレビなどで報じられているが、このままだと近日中に刑務所に収監される見通しだという。

  • 実刑判決が確定した
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「罪を償いたい」

   東京地裁は2日、元院長が運転していた車両には異常はなく、アクセルとブレーキの踏み間違いが事故原因と認定。禁錮5年を言い渡していた。控訴期限の16日までに検察、弁護側双方が控訴しなかった。

   各紙の報道によると、元院長は「ブレーキとアクセルの踏み間違えはなかった」と一貫して無罪を主張したが、15日に面会した犯罪加害者家族の支援団体代表に「遺族に申し訳ない。罪を償いたい」と話していたという。

   今後はどうなるのか。時事通信によると、刑事訴訟法には、健康を著しく害する場合や70歳以上の場合、検察官の裁量で刑の執行を停止できる規定がある。ただ、実際に停止されたケースは少なく、収監される公算が大きいとのことだ。元院長自身も収監を受け入れる意向だという。禁錮刑のため刑務所での労務作業は科されないらしい。

仮釈放もありうる

   弁護士ドットコムは、今後の手続きについてさらに詳しく書いている。それによると、元院長は「在宅事件」だったため、禁錮刑の確定を受けて、検察官が書面で呼び出しを行う。本人が出頭したのちに刑事施設の長に引き渡す、という流れになる。

   書面は、判決確定後1~2週間後くらいになることがある。ただし、新型コロナウイルス感染症の関係もあり、諸々の調整に時間がかかる可能性もあるという。

   交通事故犯はいわゆる「交通刑務所」に入ることが多いが、必ずしもそういう決まりがあるわけではなく、一般的な刑務所に入るケースもある。

   刑務所に入ったあとでも、刑事施設の長の上申などによって刑が執行停止になることはある。ただし、犯罪白書によると、きわめてわずかだ。なお、制度上は、刑期の3分の1を終えると仮釈放の可能性はある、と解説している。

70歳以上の受刑者が急増

   近年、刑務所では高齢者が増えている。社会の高齢化に伴い、受刑者に占める高齢者の比率も高まっているからだ。その実態は、斎藤充功さんの『ルポ 老人受刑者』(中央公論新社、20年5月刊)に詳しい。

   同書によると、65歳以上の老人受刑者が全体に占める比率は2007年が2.65%、17年は4.81%。ただし、受刑者の実数が減っている(7万989人→4万7331人)ので、老人受刑者の実数(1884人→2278人)が猛烈に増えているわけではない。そのなかでの顕著な特徴は、70歳以上が急増していることで、この10年間に4.8倍になっている。高齢者の犯罪で多いのは万引きだという。

   同書は、「東日本成人矯正医療センター」(東京・昭島市)についても取り上げている。要するに日本最大の医療刑務所だ。医師24人がいて12の科目で総合病院並みの診療をしている。手術も行う。一度に30人が人工透析できる設備もある。収容定員は580人。心身の疾患受刑者約250人が収容されている。最高齢の収容者は86歳だという。一般の刑務所のように、外界と隔てるコンクリートの壁はない。

   それにしても、元院長の90歳という年齢は、高齢化が進む受刑者の中でも、かなり突出している。

   刑務所では認知症と見られる受刑者も少なくないそうだ。同書では、施設側の苦労も紹介されている。受刑者の処遇上、いちばんの問題は何ですか、という斎藤さんの問いに、刑務所の看守部長は「物忘れ」がひどい受刑者の扱いだと即答している。「高齢受刑者の介護に手を取られ、現場では仕事量が増している」という。

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