米グーグルは、スマートフォン(スマホ)「Pixel6」を2021年10月28日に発売した。約1か月前、9月24日には米アップルが「iPhone13」を発表している。日本市場ではiPhoneの方が、Pixelシリーズよりも圧倒的に存在感が大きい。「Pixel6」は、自社設計のモバイルSoC(システム・オン・チップ)「GoogleTensor」を搭載している。SoCはあらゆる計算やグラフィック処理を担い、端末を動作させる重要な部品だ。ただ、機能が優れているだけではiPhoneのシェアは簡単に奪えない。Pixelはどこに活路をみいだすのか、専門家の見方は――。5000万画素はiPhoneに勝るがiPhone13と比較しながらPixel6のスペックを見ていくと、目を引くのはカメラの画素数の高さだ。画素数が多いほど、細かい描写が可能とされる。Pixel6とPixel6Proの背面に共通して搭載されている広角カメラは、5000万画素。一方のiPhone13とiPhone13Proのカメラは1200万画素で、Pixelに軍配が上がる。スマホ・ケータイジャーナリストの石川温氏に取材した。SNSで写真を共有する人が増え、ユーザーにとって撮影性能の高さはわかりやすい魅力となるため、グーグルやアップルに限らず、カメラは各メーカーが注力しているという。ただ、画素数が高いからといって画質に直結するわけではない上、中国メーカーからは1億800万画素というカメラを有したスマホも登場している。画素数だけで差別化は図りづらいと語る。近年各メーカーが力を入れているのは、AI(人工知能)とカメラの組み合わせだ。AIを活用すれば撮影した画像の処理を行って画質を向上させるなどして、画素数以外の価値を付加できる。グーグルも、「今まで培ってきたAIの技術をスマホのチップに載せ、差別化しようとしています」と石川氏はみる。AIの活用に注力しているのではないかという分析だ。今回、自社製SoC「Tensor」を採用したのも、他社製チップに後から自社のAIを搭載するよりも、自社チップの方がAIを導入しやすいからではないかと推測する。文字起こしと画像修正に強みとはいえ、アップルもiPhoneには自社設計のSoCを搭載(iPhone13の場合「A15Bionic」)し、撮影画像の画質向上を含め、様々な端末内での処理にAIを活用している。ただ、石川氏によると、AIの具体的な活用方法でグーグルとアップルには違いが存在する。例えば、Pixel6でグーグルが押し出している要素として、撮影した画像に写り込んだ余分な部分を自然に削除できる機能(消しゴムマジック)がある。またカメラとは無関係だが、レコーダーアプリで録音した音声をすぐにテキストとして文字起こしする機能が、今回日本語に対応した。文字起こしやこの画像修正機能もAIを活用した技術だが、iPhoneに標準で搭載されているアプリではこうした機能は存在しない。こうした部分で差別化されていると石川氏。一方のアップル。カメラでの動画撮影時にAIが自動でピントを切り替え、映画のような映像が撮れる「シネマティックモード」をiPhone13に搭載したりと、グーグルとはまた異なる付加価値を創出している。今後PixelがiPhoneに対抗していくにあたり、ボイスレコーダーの文字起こし機能のように、AIを活用していかにユーザーを引き付ける、アップルとは違った魅力を多く出せるかがポイントになるとした。ただ日本市場の場合、アップルファンは数多い。また楽天モバイルとNTTドコモではPixel6の取り扱いがないなど、販売力に差がある。現状はiPhoneに対抗するのは難しいのではないかと石川氏は分析した。
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