ケンモチヒデフミら「ラムのラブソング」リミックス 作曲家・小林泉美が思いを語る

   アニメ「うる星やつら」主題歌「ラムのラブソング」。作曲家の小林泉美さんが声を吹き込み、2021年11月17日に配信したカバー「ラムのラブソング (Reboot) 」を国内外の著名なアーティストがリミックスした。

   12月8日に配信された第一弾「ラムのラブソング (Reboot) Mimix EP.1」には、音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」メンバー・ケンモチヒデフミさん、中国のトラックメイカー「3asic(読み:ベーシック)」さん、音楽プロデューサー「Limited Toss」さんのリミックスが収録されている。コロナ禍で、各国のアーティストと共に音楽作りを手がける小林さんを取材した。現在の拠点は、英国ロンドンだ。

  • 小林泉美さん
    小林泉美さん
  • 小林泉美さんの「ラムのラブソング(Reboot)」ジャケット
    小林泉美さんの「ラムのラブソング(Reboot)」ジャケット
  • 「ラムのラブソング (Reboot) Mimix EP.1」ジャケット
    「ラムのラブソング (Reboot) Mimix EP.1」ジャケット
  • 小林さん photo by Bohan
    小林さん photo by Bohan
  • 「ラムのラブソング」を作曲した伝説のピアノは、現在も自宅にある
    「ラムのラブソング」を作曲した伝説のピアノは、現在も自宅にある
  • 小林泉美さん
  • 小林泉美さんの「ラムのラブソング(Reboot)」ジャケット
  • 「ラムのラブソング (Reboot) Mimix EP.1」ジャケット
  • 小林さん photo by Bohan
  • 「ラムのラブソング」を作曲した伝説のピアノは、現在も自宅にある

さまざまな国や音楽ジャンルを混ぜたかった

   小林さんは2020年10年14日、ライブストリーミング「DOMMUNE (ドミューン)」に出演し、リミックスプロジェクトが本格始動した。Limited Tossさんが作った「ラムのラブソング」のジャングル(音楽ジャンルの一つ)ミックスをバックに歌ったところ反響が大きく、「それなら録音しちゃおう」と思い立ったのだ。

「更にその前日の話があるんですよ。息子(編注:サウンドプロデューサー・SKYTOPIAさん)が大阪で開いたパーティーで、Limited TossさんがDJをしてくれて。そのときに『ラムのラブソング』のジャングルミックスをかけてくれたのが、本当の発端です。そのときにユニークだと感じたからこそ、番組で使わせてもらったので」

   DOMMUNE出演後、Limited Tossさんがジャングルミックスで使ったドラムのリズムパターンを送ってもらい、小林さんが手を入れて「ラムのラブソング (Reboot)」を作った。「『シングルで出すのもなあ...』と考え、知り合い数人に頼んでリミックスを引き受けてもらった」そうだ。

   集った国内外のアーティストに、小林さんはリミックスのコンセプトや方向性を「あえて、示さなかった」。各人の感性に委ね、異なるアプローチやスタイルで作ってもらいたかったと語る。

「例えば、Limited Tossさんは『スロージャングルグルービーが流行っている』と言っていて、私が作った『トゲトゲしたジャングル』とはちょっと違うアレンジにしてくれました。3asicさんはテクノ。ケンモチさんのリミックスは日本人に耳なじみがよさそうですね。カッコよくまとまっています」

   第三弾のEPで登場する、イングランドの音楽集団「Kero Kero Bonito」のメンバー、ガス・ボニトによるリミックスは「おしゃれなカフェでかかっていそうな、ジャズっぽい雰囲気」。新型コロナウイルスで海外旅行が難しくなったからこそ、「多国籍」なアルバムを通じて世界を感じてもらえたらうれしいと話す。

恋する乙女の「コワさ」

   「ラムのラブソング」原曲でなく、小林さんのカバーをベースにしているため、各リミックス曲からはノリの良さだけでなく「コワさ」も多少感じられるという。

   同曲の歌詞からは「好きな男が複数の女に目移りしている」ことへの嫉妬、「自分だけを好きになってほしい!」という熱烈な思いが伝わってくる。「かわいらしさだけじゃなく、ちょっとしたコワさ」がにじんでいる点が魅力だととらえた小林さんは「ラムのラブソング (Reboot) 」で、「ラムちゃんのちょっぴり怖いところ」を遊び心で膨らませたのだ。

「『知らんぷり』というフレーズにエフェクトをかけ、低くて怖い声にしました。50秒くらいのところです。エンジニアとして、データに声入れをしてくれた息子から『お母さん、いいの?こんな怖い声にしちゃって』と聞かれたくらいです(笑)。かなり遊んじゃいました」

   小林さんは「面白そうだと思ったら、『ほほいのほい』で首を突っ込む」。未知でも、楽しそうな物事に対してチャレンジングな姿勢は、若い頃から変わっていないそうだ。

   オリジナルの「ラムのラブソング」を発売した1981年当時、「いつも落ち着きがなく、所属事務所(キティレコード)内をパタパタ駆け回っていた」姿を見た社長に「君は漫画の曲を作るのが合いそう」と言われ、アニメ「うる星やつら」の仕事を提案された。

   「もともと『うる星やつら』の漫画を読んでいて大好きでしたし、面白そうだと思ったので、社長にぜひやりたいと伝えました」。物語を知っていたおかげで作曲はスムーズに進み、3曲書いて翌日提出。全て採用され、そのうちの一つが「ラムのラブソング」だった。「1曲10分くらいで書いてましたね。悩んでも、長くて30分くらい。それ以上時間をかけても、はかどらない」そう。

   思い立ったら即行動し、周囲を巻き込んで形にしていく小林さん。リミックス第二弾「ラムのラブソング (Reboot) Mimix EP.2」は2022年1月12日配信予定だ。

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