2024年 4月 24日 (水)

「ガンダム」に「戦艦ポチョムキン」 ウクライナは「戦い」の名作の舞台

   緊張が高まっているウクライナは、過去に「戦い」をテーマにした名作の舞台にもなってきた。映画「戦艦ポチョムキン」は、ウクライナ南部の黒海に面した港町オデッサで起きた反乱がテーマだ。アニメ「機動戦士ガンダム」でも、同じくオデッサが登場する。戦争に引き裂かれた悲運の愛を描いた映画「ひまわり」も、ウクライナで撮影された。

  • 映画「戦艦ポチョムキン」の撮影現場「オデッサの階段」
    映画「戦艦ポチョムキン」の撮影現場「オデッサの階段」
  • 映画「戦艦ポチョムキン」の撮影現場「オデッサの階段」

今もある「オデッサの階段」

   「戦艦ポチョムキン」は1925年に製作・公開されたソ連のサイレント映画だ。監督はエイゼンシュタイン。ロシア革命の少し前、帝政ロシア時代の1905年に起きた戦艦ポチョムキンの水兵たちの反乱を素材にしている。

   「モンタージュ技法」という新しい撮影方法で製作され、その後の世界の映画作品に大きな影響を与えたことで知られる。

   黒海を航行していたポチョムキン号はオデッサに入港。水兵たちの反乱は、オデッサの市内にも波及した。映画では、多数の市民が犠牲になったことを描く。中でも有名なのは、「オデッサの階段」シーンだ。母親が撃たれて倒れ、赤ちゃんを乗せた乳母車が巨大な階段を転げ落ちていく場面は映画史に残る。この大階段は今もオデッサにあるそうだ。

   「機動戦士ガンダム」は日本のロボットアニメ。フィクションだが、作中の「一年戦争」のときに、地球上におけるジオン軍最大の拠点となったのがオデッサだ。「オデッサの激戦」が展開される。

   ヤフー知恵袋には、「『ウクライナ政府はオデッサに~』なんて、ニュースで『オデッサ』と聞いたらついガンダムが頭の中を過りますか?」という質問が出ている。

   「ガンダムと同時に『戦艦ポチョムキン』の階段のシーンが出てきます」というのが、ベストアンサーになっている。

ひまわり畑を探し回る

   在日ウクライナ大使館のウェブサイトには、1970年公開の映画「ひまわり」のことも出ている。名匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督の代表作の一つ。伊仏米ソの合作だ。

「第二次世界大戦時に引き裂かれた悲運の愛を描いたこの映画をご覧になった方は多いのではないでしょうか? 実はこの広大なひまわり畑は,ウクライナで撮影されたものなのです。ソフィア・ローレン扮するジョバンナが,行方不明となった夫マルチェロ・マストロヤンニ扮するアントニオを一面に咲き誇るひまわり畑の中で必死に探している姿は,みなさんの記憶にも鮮明に残っていることでしょう」

   撮影場所は首都キエフから南へ500キロほど行ったヘルソン州らしい。今でも7月下旬頃にキエフから南下して郊外へ行くと,一面に咲きわたるひまわりを見ることができるという。

   ウクライナは第二次世界大戦で独ソ戦の激戦地になった。1941年の「キエフの戦い」では独軍がキエフを包囲、ソ連側は70万人ともいわれる犠牲者を出して大敗した。戦闘は長期化し、伊軍が独軍支援で送り込まれた。

   映画「ひまわり」は、行方不明になった伊軍兵士の夫の消息を、戦後、妻が現地を訪れて探すという設定だ。ウクライナのひまわり畑の中で妻役のソフィア・ローレンが地元の老女に夫の消息を尋ねるシーンがある。撮影当時のウクライナはソ連に属していたが、その老女はウクライナ語で答えているという。

「愛のトンネル」もある

   在日ウクライナ大使館のウェブサイトは、日本映画「クレヴァニ 愛のトンネル」も紹介している。2015年公開。今関あきよし監督、未来穂香主演。

   「愛のトンネル」とは、ウクライナの西部リーウネ州にある有名なトンネルのこと。木々に囲まれた鉄道路線上のトンネルが美しい景観を作っており、カップルがこのトンネルをくぐると願いがかなうという言い伝えがある。

   映画の題名にあるクレヴァニとはトンネルのある場所の名前。高校の教師と生徒との不思議な愛の物語の舞台となっている。映画にはキエフの中央駅やウクライナの美しい田舎の風景も出てくる。

   数々の名作の舞台になっているウクライナ。日本人としては、「オデッサの階段」や「愛のトンネル」、さらには一面の「ひまわり畑」が破壊されることがないように、そして何としても戦争が起きないように、と祈るしかない。

独が武器供与を渋る理由

   ロシアのプーチン大統領は核戦争になれば「勝者はいない」と語っている。ウクライナに軍事支援する西側諸国が少なくない中で、独はどちらかと言えば仲裁に奔走している。

   その理由を日経ビジネス(2月8日)で、在独ジャーナリストの熊谷徹氏が「欧州の盟主ドイツがウクライナ軍事支援に二の足を踏むわけ」という記事で解説している。

「欧米諸国がウクライナにミサイルやロケットなど武器の供与を進める中、ドイツの支援はヘルメット5000個にとどまる。その背景にあるのは、ロシア産の天然ガスと石油への依存だけではない」

   独が武器供与を渋っているのは、一つには独の「戦争兵器管理法」などで、「紛争に巻き込まれている国、もしくは紛争が勃発する危険にさらされている国に対する戦争兵器の輸出や移転」を原則的に禁止しているからだという。ウクライナでは、2014年から東部で親ロシア武装勢力と政府軍の間で戦闘が展開されているため、紛争地域とみなされ、独は武器の輸出や移転ができない。

   加えて熊谷氏は、「ドイツ人にとって、第2次世界大戦中にナチス・ドイツ軍がウクライナを含むソ連領土に侵攻し深刻な被害を与えた記憶が、この地域への武器供与をためらわせる理由となっている」と解説している。

   ナチス・ドイツのウクライナに侵攻した過去が、約80年後の現在も、独を金縛りにしているようだ。

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