2024年 4月 16日 (火)

京都の赤飯 酒井順子さんが「餅は餅屋」の言葉で思い出す老舗

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特集が成立する土地

   dancyuの特集は「今日は、京都で4時から呑む!」というのが裏タイトルで、実質的には左党のための京都ガイダンス。「呑めるおかず21皿」といった自作用のレシピまで付いている。その中で、アルコール度の低い酒井エッセイは異彩を放つ内容だ。

   とはいえ、もともと食いしん坊が多い読者たちは、たとえば「栗の味と食感がお赤飯のもっちり感に映え、実りの季節を感じさせます」といった、美味しそうな表現にうなずきながら読み進めるのだろう。

「やはり本店で炊きたてを買うと、気分が上がるというものです」
「京都盆地の深層から汲み上げた水で炊いた都(みやこ)のお赤飯を食せば、特にめでたいことはなくとも、めでたい気持ちになってくる」

   こうした文章を読むと、味のかなりの部分が実は、食す時の気分や予備知識に左右されることがわかる。「京の味」と聞けば雅や洗練を感じるし、評判の老舗と知れば不味かろうはずがないと思う。赤飯だけでなく、他の食品や食材にもそれぞれ「〇〇といえば××」という老舗や有名店が存在するのだろう。これも長い歴史が紡いだ知的財産だ。

   思うに、主要誌の特集で「△△で呑む、食べる」が成立する土地は多くない。反論歓迎で挙げれば、京都と同様、独自の食文化という意味で大阪、そして地理的優位が大きい北海道と沖縄か。東京は漠としており、ひと括りにできない。特集を組むなら「銀座で呑む」「渋谷で食べる」と細分化するしかない。

   もちろん、47都道府県それぞれに旨いもの、旨い酒がある。ところがここ数年、食雑誌で目につく特集といえば「家で呑む」ばかりだった。

   そろそろ本場で呑みたい、プロが供するホンモノを食べたい。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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