2024年 4月 26日 (金)

回らない寿司屋 金田一秀穂さんが注目する呼称の「再命名」とは

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否定形を超えた名に

   色つきが当たり前になって「モノクロ写真」「白黒テレビ」の言葉が生まれた。ケータイの全盛下、デスクに鎮座する従来型には「固定電話」という呼称が付いた。再命名は、区別する必要から生まれた苦肉の知恵でもある。

   〈新たな技術や概念の登場により、既存の言葉では対象を十分に示すことができなくなった場合、再命名が促される。既存の言葉(例えば電話)は、新語(携帯電話)と再命名(固定電話)を包含する上位概念に昇格する〉というわけだ。

   いずれ、クルマと言えば「電気自動車」のことになりそうだし、エンジンがある旧来型は「内燃車」あたりに置き換わるだろう。

   「回らない寿司屋」に関しては、日常語として定着しているとは思えない。

   「寿司でも食おうか」「スシロー?」「いや回らないほうで」といった会話は普通に交わされているだろうが、「回らない寿司屋」は新語としては長すぎる。「無回転寿司」「固定寿司」「不動寿司」「対面寿司」「本格寿司」...どれもしっくりこないのだが。

   金田一さんがあえて「回らない」話から始めたのは、身近で分かりやすい事例だからと思われる。いまや寿司屋にも色々あって、各自の認識はさまざま。とりわけご馳走になる側にすれば、回るのか回らないのか、これが最大の関心事である。

   「回らないほう」にもそろそろ、否定形ではなく前向きな、格と出費に見合う気の利いた呼称がほしい。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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