アーティストの平日は別の顔 週末に変身する「兼業音楽家」
土日のみ稼働で「1月~4月末で10曲」納品
日々のルーチンを守り続けるCHEEBOWさん。今年は依頼が集中し、1月から4月末までに10曲を納品した。土日しか稼働しないため、大変な作業量だ。それでもこなせる秘密は、「切り替えの早さ」にある。
CHEEBOW「本業でもアプリ開発とアドバイザーをやっているのですが、そこのスイッチングも、ものすごく早く、都度切り替えながらやっています」
同じように、週末になったら「バン」と音楽モードにスイッチする。平日は、「週末に何をするか」考えていることが多く、すぐに取り掛かる準備ができて効率がよいと話す。
逆に、サエ子さんは「仕事と音楽、同時進行型」。全部の案件が常に走っている状態、と説明する。小さな子どもがいると予定外の事態になりやすく、柔軟な対応を取れるスタイルが合うのかもしれない。
サエ子「何かしていても、別件のひらめきを不意に得てしまいます。仕方ないので、ボイスメモを取り、後で処理します。CHEEBOWさんは、平日に音楽のことを考えませんか」
CHEEBOW「平日にメロディーが浮かぶことは、ほぼないです。週末、アイデアの蛇口をひねると出てくる感じ。開いている間ずっと、アイデアの破片が無限に流れてくるから」
「兼業音楽家」でも、境遇や取り組み方はそれぞれ違う二人だが、「兼業すると、仕事にも音楽にもいい影響がある」と口をそろえる。
サエ子さんは、編集部での経験を通じて学んだ「読者目線での表現の仕方」や、物作りの現場で得た知識を音楽に生かしている。逆に「サエ子」が名刺になり、本業でエンタメの仕事を獲得した経験もあるため、「どちらも本気でぶつからねばと思っています!」。
かたや、「僕が仕事にしているプログラミングと音楽は、内容自体は補完するところはない」と、CHEEBOWさん。
CHEEBOW「ただ、僕は工数管理をかなりしっかり行っています。スケジュールと制作費の管理は本業のノウハウが生きていそうです」
楽曲制作では、外部と頻繁にやりとりする。ギターの音や歌詞を依頼する際、ガントチャートを使うそうだ。この経験が本業にフィードバックされ、「例えばプロジェクトのリーダーとして、回していく部分などに役立っている」。
二人とも、年齢や生活のステージが変化しても、いろいろなやり方を試して落ち着いた今のスタイルから、大きく変わらないだろうと言う。二人の「いいものを作りたい」という探究心やチャレンジ意欲が、常に外側へと向き続けているからなのかもしれない。
(取材・執筆 / 薮田朋子)