2022年 10月 6日 (木)

台風、豪雨、そして地震 災害で「トイレに行けなくなる問題」を考える

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   大型の台風11号の接近で、沖縄地方は大雨による影響が心配だ。日本では近年、夏になると毎年、豪雨災害が起きている。今年も7~8月、東北や北陸をはじめ複数の地域で川の氾濫、家屋の浸水といった被害が報告された。

   J-CASTトレンドではこれまで、災害時の「トイレ対策」の必要性を訴えてきた。排便は時や場所を選ばず、誰にも代わってもらえない。2022年9月1日に行われた「防災トイレフォーラム2022」では、トイレ問題の重要性を取り上げた。

  • 2016年4月の熊本地震で、熊本県益城町の避難所に設置された仮設トイレ(写真:Abaca/アフロ)
    2016年4月の熊本地震で、熊本県益城町の避難所に設置された仮設トイレ(写真:Abaca/アフロ)
  • 「防災トイレフォーラム2022」発表会場の様子
    「防災トイレフォーラム2022」発表会場の様子
  • 2016年4月の熊本地震で、熊本県益城町の避難所に設置された仮設トイレ(写真:Abaca/アフロ)
  • 「防災トイレフォーラム2022」発表会場の様子

我慢すれば健康被害につながる

   フォーラムの初め、NPO法人日本トイレ研究所代表理事・加藤篤氏は、過去の国内での大型災害とトイレの関連調査の結果を取り上げた。2011年の東日本大震災で、「地震後、何時間でトイレに行きたくなったか」との質問に、30.6%が「3時間以内」と回答。「6時間以内」を合わせると、66.7%に上った。

   一方、上下水道が壊れればトイレは使えず、復旧まで相当の日数がかかる。仮設トイレが避難所にすぐ届くとは限らない。水洗トイレが使用不可でも、排せつは待ったなし。その結果、著しく不衛生な状態で用を足さなければならない点を加藤氏は指摘した。汚れたトイレは感染症を引き起こしかねない。またトイレに行く回数を減らそうと水分摂取を控えたり、トイレそのものを我慢したりすれば、健康を害する恐れがある。

首都直下地震はトイレにどう影響

   東京都は2022年5月、首都直下地震の被害想定を10年ぶりに見直した。この間、社会環境も変化している。これらにより顕在化した課題を、都総務局防災計画担当部長・芝崎晴彦氏が発表した。

   「都心南部直下地震」の想定は、マグニチュード7.3で、建物被害は19万4431棟、死者6148人、負傷者9万3435人、帰宅困難者453万人に見直された。いずれも10年前の数字より少なくなっている。住宅の耐震性の向上、テレワークの進展やインターネットショッピングの普及による外出機会減少をはじめ複数の要因が影響している。職場の近くに住む人の増加で、帰宅困難者数は減少するという。とは言え、被害が甚大なのは変わらない。

   新たな被害想定に基づく、ライフラインの復旧見通しはどうか。電力は約4日後、水道は約17日後、ガスは約6週間後だ。だが芝崎氏は、「この日数で必ず復旧するとはいかない」と指摘する。例えば電力の場合、「約4日後」には次のような説明が続く。「配電設備被害の復旧のみ評価。拠点的な施設・機能(発電所、変電所及び基幹送電網等)の被災は、定量評価結果には含まれていない」。例えば地震ではないが、2019年9月の台風15号では、千葉県で送電に必要な鉄塔や電柱が数多く倒壊して停電が長期化。完全復旧まで19日間を要した。

   想定見直しにより、都では定量評価だけでなく、「ライフラインや交通インフラなど約50項目について、発災後の時間軸に応じた被害シナリオを定性的に評価」した。そこには、トイレに関する評価も含まれた。一部を例示しよう。

「停電・断水した地域では、自宅の建物に被害がなくても、水やトイレの使用が困難となり、周辺の公園や避難所等に仮設トイレが設置されるまで、被災者自身が携帯トイレなどで対応することを求められる」
「上下水道の機能支障や、停電等による各世帯・建物のトイレ機能の停止により、仮設トイレの需要が増大するが、早期の設営は困難となる」
「周辺の下水管路に被害がなくても、オフィスビルやマンションなどの集合住宅では、建物の所有者や管理会社による排水管等の修理が終了していない場合、水道の供給が再開されていてもトイレが利用できない」

液状化で下水道壊滅

   2011年の東日本大震災では、地震や津波のほか、液状化による被害も深刻だった。大きなダメージを受けたのが、千葉県浦安市だ。フォーラムで、当時の市長だった松崎秀樹氏がプレゼンテーションをした。

   東日本大震災で、液状化による家屋被害は1都8県に及んだが、千葉県、中でも浦安市が全体の3分の1を占めた。同市は海面埋め立てでできた土地が市全体の約4分の3に上る。だが松崎氏は、「液状化は決して埋め立て地だけの現象ではない」と強調した。県内では、我孫子市のように内陸の地域でも液状化が発生していた。

   液状化により、地中の下水道は壊滅的な損害を受けた。それは「トイレ問題」に直結する。震災後、浦安市では、上水道の復旧が発災27日後だったのに対して下水道は36日後だった。「下水道が復旧しないとトイレは使えない」と、松崎氏は指摘する。

   一方で、建物と共にトイレそのものは無事だった住居もあった。水は流せないので、市側で用便の際に使える凝固剤を36万袋、市民に配布。便器の中にゴミ袋を被せた簡易トイレをつくり、排便後に凝固剤で固め「燃やせるゴミ」として出せるよう便宜を図った。

   緊急時にはこうした対策は必要だが、衛生的にも、また心理的にも長期間は難しいだろう。その後、市では仮設トイレを準備したが、不慣れから設置作業に戸惑ったり、場所が適切でなく利用が進まなかったりなど困難を伴ったという。

   松崎氏は、「排せつ問題は人間の尊厳にかかわる」と言う。日常誰もが行う行為であり、体調につながる。「様々なケースをきめ細かくシミュレーションしなければならないのが、トイレ問題」だと、締めくくった。

(J-CASTトレンド 荻 仁)

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