2024年 4月 20日 (土)

「リスキリング」今年の流行語大賞かも 岸田首相が所信表明で強調した背景

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   最近、「リスキリング」という言葉をよく聞くようになった。「リ」と「スキリング」が合体した新語で、「新しくスキル(技能)を付ける」「学び直す」というような意味だ。特に社会人に対し、デジタル社会やIT時代に対応できる能力を、特別の講習やトレーニングによって付与する場合に使われることが多い。

  • 「リスキリング」が日経新聞朝刊一面トップに
    「リスキリング」が日経新聞朝刊一面トップに
  • 「リスキリング」が日経新聞朝刊一面トップに

日経新聞は朝刊一面トップ

   岸田文雄首相も2022年10月3日の臨時国会の所信表明演説で、この言葉を使った。

「リスキリング、すなわち成長分野に移動するための学び直しへの支援策の整備・・・・」「特に個人のリスキリングに対する公的支援については、人への投資策を『5年間で1億円』に拡充します」

   さっそく日経新聞は翌4日の朝刊一面トップで、「リスキリングに1兆円、首相所信表明」と5段見出しでアピールした。

   日経新聞のデータベースで調べてみると、この言葉が新聞記事で使われるようになったのは最近だ。過去1年間に日経で129回、朝日で13回、毎日で7回、読売で12回。その前の1年では、日経には32回登場するが、朝日、毎日、読売では見当たらない。

   大辞泉の「新語大賞」でも21年は、ベスト10に「リスキリング」は入っていない。日経の20年7月の記事では「リ・スキリング」。当初は「・」付きの表示だった。

再就職支援業界が後押し

   最近、多く見かけるようになった背景には、人材教育・再就職支援業界の動きもあるようだ。経済産業省のウェブサイトを見ると、早くも2021年2月、「リスキリングとは――DX時代の人材戦略と世界の潮流--」というリポートが資料として掲載されている。筆者は、リクルートワークス研究所の石原直子人事研究センター長/主幹研究員。以下のような要望・提言が掲載されている。

「『リスキリングにたいして、一義的に責任を負うのは企業』との認知を広げて、そのためのプラットフォーム構築と資金投下を始めてもらいたい!」
「『リスキリング』を改めて定義し、日本の産業領域・行政領域でポピュラーなワードとして定着させたい!」 「リスキリングの具体的な方法論を(海外事例や過去事例をもとに)明らかにして、世の中に提供したい!」

   岸田首相の所信表明演説は、概ねこの要望・提言とも呼応したものだと推測できる。首相は、「年功制の職能給から日本に合った職務給への移行」「企業間・産業間での労働移動の円滑化」なども重要課題として、所信表明で取り上げている。

文教費自体の拡充も必要

   日本では長年、実質賃金が上がらず、成長が鈍化。経済面で停滞し、国力が落ちているということは多方面で指摘されている。

   経済評論家の加谷珪一さんの『日本は小国になるが、それは絶望ではない』(株式会社KADOKAWA)によると、日本が立ち直るには、業界再編・人材の流動化が必須。そのためには、転職が可能になる高い能力を社会人に付与できるような再教育システムが必要だ。

   同書には「高等教育機関への25歳以上の入学者比率」の一覧表が出ている。日本はわずか2.5%。スイス、イスラエル、アイスランド、デンマーク、ニュージーランド、スウェーデンなどは25%を超えている。「豊かな国」では社会人になってからも、大学院で再び学べる仕組みが出来ている。

   加谷さんの『貧乏国ニッポン――ますます転落する国でどう生きるか』(幻冬舎新書)によると、教育に対する公的支出のGDP比率は、日本は主要43国の中で40位。一般会計における文教費の割合は、1960年代は12%近くあったが、現在は4%近くに低下している。

   社会人の再教育と同時に、文教費自体の拡充も必要とされている。

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