有用な情報を求めて音声配信を聞き始める人の中には、やがてパーソナリティーの人間性に魅力を感じ、「有料でも聞きたい」リスナーが出てくる――。日本の音声プラットフォーム「Voicy」の緒方憲太郎代表と、Voicyチャンネル「きのうの経済を毎朝5分で!」のパーソナリティーで、ラジオマンでもあるDJNobby氏の対談で前回、話題になった。後半となる今回は2人に、音声による情報発信が秘めている価値と可能性を語ってもらった。アニメは見るけど、マンガは読まないワケ緒方:今後は高齢者がどんどん増えることで老眼などはもちろん、目が疲れる人も多くなっていくでしょう。情報は、目と耳からしか得られない。なのに、なぜ「耳側」を開拓しないのでしょう。DJNobby:私の両親もVoicyを使っています。やはり、テレビのニュースや文字メディアは、目が疲れるみたいで。緒方:それに、これから人はどんどん忙しくなるので、一つのコンテンツのみを見ているだけでは済みません。今、アニメは見るが、マンガは読まない子が増えていると聞きます。アニメは、映像を見ながらツイートもするとか、他のことを並行できますが、「マンガは、マンガを読むしかできないじゃないか」と言うんです。一つしかできない状態が苦痛、という感覚が子どもたちにはあるんですね。編集部:耳だけ貸せば良い、つまり「ながら聞き」できる点で、音声での情報収集は有効だというわけでしょうか。緒方:メディアの価値は「情報を活字で届ける」でなく、「情報を届ける」こと自体にありますよね。そのプロセスは、何パターンあってもよい。体の拘束性を低くして情報提供できるのが、音声の強みだと思います。編集部:耳で情報を得るニーズが高まると予想する根拠は、ほかにありますか。緒方:あまりにフェイクニュースが出てくる状況では、「安心安全と本人性」が価値になる。その価値を、音声がもたらせるのではないでしょうか。「その人の声で聞く情報じゃないと、信頼ができない」という意見も出てくると思います。これを単純にビジネスチャンスだととらえるのは簡単ですが、僕は「高い熱量を持ったファンが可視化できる」ことに価値があると思っています。複数チャンネルのプレミアムリスナーになっているユーザーもたくさんいて、個々のパーソナリティーにとどまらず「Voicyのファン」が極めて多いと感じます。ラジオをやっていると「弱気になる」、でもDJNobby:緒方さんは、音声メディアの過去・現在・未来をどう見ていますか。緒方:海外はどんどん伸びているのに、日本だけ遅れているのが過去だと思います。今の日本の中ではどちらかというと、インフルエンサーを軸に音声コンテンツが成長期を迎えていて、「夜明け」みたいに感じています。DJNobby:ラジオ業界は、僕が知る限りずっと「斜陽産業」と言われ続けていますし、収益的にも厳しい局が多いこともあって、先行きには弱気になるんですよでも緒方さんと一緒にしゃべっていると、「この人は本当に未来を見ているんだな」と感じます。今日も勇気づけられました。
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