2024年 4月 20日 (土)

コロナと自炊力 白央篤司さんは「ツレ」のチャーハンに感謝

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

つい しんみり

   フードライターにもジャンルがあるが、『自炊力』(光文社新書)なる著書もある白央さんは、食べ歩きの評論家というより 暮らし密着の実践者といえる。

   オレンジページは、季節のレシピが満載の料理雑誌。白央さんのコラムは隔号で掲載されてきた。雑誌が月二回発行なので、スタートから2年、計24回での終了だ。よりによって最終回は自炊ならぬ「他炊」の顛末を記すことになり、タイトルわきにある「作ったもの」欄も正直に「作ってもらったもの」に変えてある。

   「自炊力」は独り暮らしのクオリティーを左右する。食材や調理法、購入先の選択肢が豊かになった今でも、それは変わらない。本作を読んで、二人暮らしでも、子どもがいてもいなくても、個々の自炊力は重要だと納得した。音楽のバンドでも、それぞれが複数の楽器をこなせれば何かの時に融通が利くし、創作の幅も広がるというものだ。

   もうひとつ勉強になったのは、好物のレシピ化という作業である。得意料理ほど、目分量や勘に頼りがちになる。実は白央さん、小さじ何杯、カップ何㏄というのがどうも苦手らしい。その人が「レシピ化」を言うのだから有用と思われる。これまた音楽にたとえれば、どんなに素晴らしい楽曲も楽譜がなければ引き継げないし、残らない。「私の身に何かあったら、たまには作って思い出してほしい」...しんみりと共感してしまった。

   本作はこう結ばれる。「さて本連載も最終回。憧れの『オレンジページ』でコラムを書けて嬉しかったなあ。2年間本当に、ありがとうございました」。

   こちらこそ、自炊にもいろんな「奏法」があるものだと勉強になった。同じ料理好きとして、大いに楽しませてもらいました。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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