「慶大生」も燃える 「けん玉」人気上昇中

   「けん玉はスポーツ!?」――。いや、本当にそうらしいのだ。実際、けん玉は手先だけでなく、全身のバネを使った運動なので健康増進に役立つと言われていて、子供から老人までが楽しめる生涯スポーツとして、公民館や児童館を中心に静かな広がりを見せているのだ。今回は「競技人口300万人」ともいわれる「けん玉」にスポットを当てるべく、都内で行われた大会に足を運んでみた。

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狭い場所、選手は10人前後…?


競技開始前、選手たちの表情は真剣そのもの

   2008年9月某日、東京都日野市の「ひの社会教育センター」で「全日本学生けん玉選手権」「全日本ユースけん玉選手権」「JKA空中技研究学会杯」という3つの大会が開催されていた。ただ、大会名こそ仰々しいが、会場はどう見ても公民館の一室といった感じ。集まった選手も10人ほどで、取材もJ-CASTニュースの記者1人というありさまだ。しかも、「全日本学生けん玉選手権」にエントリーしたのはこのうちの3人だけ。この状況には正直、拍子抜けせざるを得なかった。

   ただ、この場所に集まっていたのが、けん玉日本チャンピオンの重木洋選手をはじめ、国内における「けん玉の猛者」だちであることは紛れもない事実なのだ。

   試合前のウオーミングアップは圧巻だった。あちこちでけん玉がヨーヨーのように宙を舞い、見事にけん先に収まる。けん玉というより、ジャグリング・ディアボロを見ているような感じで、遊びの域を超えたパフォーマンスといえた。

高難度パフォーマンスの応酬

   さっそく、始まったのは「全日本学生けん玉選手権」。選手たちは2列に並び、片方のプレーをもう一方が判定するという方式だ。「課題」を互いに数回行い、1回成功につき1ポイントが与えられる。最終的に獲得ポイントを争い、予選の上位者がトーナメントで1対1の勝負を行う。

   まず予選がスタートしたが、それまでの和やかな雰囲気は一変し、張りつめた空気が会場を包む。静まり返った会場に「カン、カン」という音と、選手たちの「ふーっ」という息遣いだけが響き、見ている方も思わず息をのんだ。例えると試験会場といった感じだろうか。しかも、エアコンが入っているというのに額の汗を拭う選手たちが目立つ。間近で見て、これがスポーツ・けん玉なのだなと実感した。

   「技」も実に多くのものがある。皿やけん先に玉を乗せるだけでも色々なバリエーションがあり、けんではなく玉の方を持ってけんを受けたり、玉の上にけんを乗せたりするものもある。また、けん玉を空中に上げてキャッチする"空中技"は実に鮮やかだ(動画あり)。

   この空中技に特化した「JKA空中技研究学会杯」の本戦では、規定課題の他に自由課題があり、多くの選手が難易度の高いオリジナル空中技を披露した。空中に投げたけん玉を一回転してキャッチし技を決めたり、空中で目にも止まらぬ早さでけん玉を回す"扇風機"という技を多用したりと、どれも素晴らしいパフォーマンスだった。

子供から老人まで対等に楽しめるのが魅力


競技用のけん玉…結構、フツー??

   一体、けん玉の何が夢中にさせるのか? この日、最も多くのメダルを獲得したのは慶応義塾大学の秋元悟さんだ。秋元さんの段位は「6段」。指導員の資格も持つ日本でもトップクラスのけん玉選手で、児童館や幼稚園などにけん玉を教えに行くこともあるという。

   そんな、秋元さんは、けん玉の「魅力」について、

「子供から大人まで対等に遊べること。基本はやっぱり楽しんで遊ぶことですね」

と、サラリ。どんなスポーツでも競技となると楽しさを忘れてしまいがちなもの。遊びから生まれた「スポーツ・けん玉」ならではの魅力なのかもしれない。

   秋元さんが本格的にけん玉を始めたのは大学に入ってから。そこから、ほとんど独学で腕を磨いてきたそうだ。

「インターネットで検索をかけると色々なサイトがあるんですよ。始めは技なんてほとんど知らなかったんですけど、それを見ながら練習を続けました。テレビを見ながらの時間も含めると1日3時間ほど練習しているでしょうか。もう生活の一部ですね」

   けん玉は全国各地で売っているが、競技で使えるのは日本けん玉協会が認定したものだけ。大手量販店やネット通販で1000円前後で購入できるそうだ。

   なお、プレーヤーたちの名誉のために記すが、大会によっては200~800人の選手が出場することもあるのだとか。

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