【NY発】「14万人」を禁煙させた市長 お次はコーラで税収10億ドル

   小学校の取材に行った時、お昼時間になり、子供達の昼食風景を見学することができました。アメリカの定番、ピーナッツバター&ジェリーサンドイッチを食べている子供達の中に、ポテトチップスとコーラだけ!のランチを食べている子を発見。思わず「先生!これでは栄養不足かつ塩分の取りすぎで、この子は、将来、病気になりますよ。お母さんに連絡してください!」と、言いたくなったのを、ぐっとこらえてしまいました。

   チーズまがいのものにつけて食べるクラッカーに甘いチョコレートミルクのランチの子供もいて日本の給食が、栄養を考えた手作りのいかに豪華なものかを再認識した次第。

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保険法案で健康障害に注目集まる


スーパーの飲料水コーナー。ボトルのサイズも2リットルが標準です

   アメリカ、とくにニューヨークは、外食産業の盛んな、有名レストランの林立する、世界の食の中心ではあるけれど、レストランでは、刺身をコーラで流し込む人もいるし、家庭でも、我々日本人がお茶を飲むように食卓にコーラが登るのが現実。スーパーに行くと、コーラの価格は、水より安かったりする事も。

   大騒ぎで通過したアメリカの保険法案の後、注目され始めたのが、肥満によって引き起こされる糖尿や心臓病などの健康障害。肥満を減らせば、病気になる人も減る、保険の出費も抑えられるという考えから、肥満対策が、様々なところで声高に叫ばれ始めました。

   ここに飛びついたのが、税収に悩む自治体。コーラを含むドリンク類、1オンス(30ml)に付き1セントを課税する法案が取りざたされています。一缶12㌣の税金となり、ニューヨーク市では、これによる税収を10億ドルと見込んでおり、コーラ会社からの反対もなんのその、禁煙、トランスファットの使用禁止をやってのけたブルーンバーグ市長らは、かなり強気で法案は通過しそうです。禁煙が徹底され、タバコに高額の課税が決まった後、14万人のニューヨーカーが禁煙に成功したという結果も、ソーダ税の肥満対策に拍車をかけています。

ハイフルクトーセスって何だ?


マフィントップ(ウエストからはみ出たお肉)なんて当たり前。肥満のスケールも日本とはレベルが違う

   このコーラの他に槍玉に挙げられているのがコーンシロップ。

   テレビのコマーシャルでは、子供にドリンクを注いでいる女性にむかって「あなた、その飲み物の中に、ハイフルクトーセスが含まれているわよ」と耳打ちする意味ありげなメッセージを含んだものも流された。

   確かにハイフルクトーセスと聞くと、体に悪いケミカルみたいに聞こえるが、はたしてその正体は何なのか?ニューヨーク大学のネッスル教授は「コーンに酵素を加えると、グルコースとフルクトースに分かれます。砂糖も同じくこの二つの物質から成り立っています。同じ成分なのですよ」と語る。

   世界最大のコーン生産国であるアメリカでは、政府からコーン農家に助成金が出され、コーン市場を守るために砂糖の価格が吊り上げられたそう。結果、砂糖53セントに対して、コーンシロップは29セントという安い価格に。コーンシロップが市場に広まった背景には、こんな理由があったのです。

   それでも収まらない消費者のコーンシロップ不信に対して、現在、体内で、砂糖とコーンシロップのフルクトースの吸収過程が異なるかどうかを、カリフォルニア大学デービス校で実験中。この結果は、夏の終わりに出るそうです。

   この消費トレンドを受けて、クラフト、クエーカーなどのブランドは、商品からコーンシロップを削除しはじめています。反応が早いのは、自分の体の健康を考えねばならない人よりも、ビジネスマンのようです。

結局、法案は通らず

   (2010年7月9日、追記)

   さて、このコラムを公開後、状況が変わりましたので更新します。ソーダ飲料だけを課税対象にした事に関して、「そんなに肥満する食べ物に課税したければ、ポテトチップスやドーナッツにも課税すべき!不公平だ!」という人も現れたのです。そして、この法案に「待った!」をかけたのが、飲料メーカーと、そのロビイスト。アメリカ飲料組合の$9.4ミリオンをはじめ、多額の現金が動いた模様で、とうとう、この法案は葬りさられてしまいました。

   このコーラ税。賛成、反対に分かれて議論されていましたが、この動きによって、ソーダなどのドリンク類に、いかに多くの砂糖が含まれているのかを知った人が増えたのなら、それはそれで、肥満防止キャンペーンは、成功だったかもと思うのですが、いかがでしょう。

坂本真理

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