日本人と異なるイタリア人の"リア充" ローマ在住15年、田島麻美さん新著

■「イタリア人はピッツァ一切れでも盛り上がれる ローマ発 人生を100%楽しむ生き方」(田島麻美著、双葉社刊、1400円=税抜)

   イタリアといえば、パスタなどの料理、バッグや靴などの高級ブランド、世界で人気のプロリーグ・セリエAがあるサッカーと、文化的な発信力は強く、欧州のなかでも親しみが深い国の一つといえる。そのイタリアに住んで15年目を迎えた日本人のライター・エッセイスト、田島麻美さんの新著で2015年7月24日に発売される「イタリア人はピッツァ一切れでも盛り上がれる」は、わたしたちが知っているようで実は知らない彼の地の"リアル"が描いた一冊。「食」や「匠」を支えているスピリッツや、発信力の強さの秘密も分かりそうだ。

「イタリア人はピッツァ一切れでも盛り上がれる ローマ発 人生を100%楽しむ生き方」
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ユーロ危機の渦中で見つけた「日本人が学べること」

   田島さんは00年9月に「ボーッとしたくて半年間だけの予定で」イタリアに渡った。ボーッとしたかった思いはいつの間にか意欲に変わり、国立ローマ・トレ大学に進んで11年3月に宗教文化比較をテーマに修士論文を書き上げ「ディプロマ」(卒業証書)を得た。

   「イタリア人はピッツァ一切れでも盛り上がれる」は、田島さんの7冊目の著作。ユーロ圏のなかで10~11年にギリシャに端を発した債務危機に見舞われたイタリアで暮らし「危機下のイタリア庶民の暮らしから日本人が学べること」に焦点を当てて書いたという。

   田島さんは、J-CASTトレンドの電子メールによる取材に答え、執筆の動機をさらに詳しくこう述べた。

「多くのイタリア人は、秩序ある日本の社会は『理想的社会のモデル』と認識している。経済的に安定していて探せば仕事が見つかり、二十代の若者でもちゃんとアパートを借りて暮らして行けるだけのお給料がもらえる。それだけでも今のイタリア人にとっては『まるで天国のよう』に見える。ところがイタリアでは『就職口がなかなか見つからず、やっと見つけた仕事先で奴隷のように働いても給料は増えない』という現実に向き合っている。そんなこの国の日常が、イタリアを訪れる日本人にはなぜか『楽しそう』に映るということに大きな関心を抱いた」

『アナ雪』知らない イタリアでは『大ブーム』は起こらない

   田島さんによれば、イタリア人は総じて世の中が不安定でもそれに流されない自分をキープする方法を知っているようだという。日本の読者に新著を通じて「流されない自分を作るヒントを得てもらえれば」と述べた。

    収められたエッセイのタイトルをみると...、

「幼い頃から馴染んできた地元の小さな店をとことん愛する」
「『家族は城塞』。マフィアでさえ家族には手を出さない」
「『アナ雪』を誰も知らない!? イタリアでは『大ブーム』は起こらない」
「『世界的に売れている』『有名人が使っている』、だからどうなの?」
「黙っていることは認めること。反対なら最後まで『反対』と言い続ける」
「『使いきれないほどのお金』など無意味。『人間的な暮らし』にこそ絶対的な価値がある

   ――などだが、材料はさまざまなものの、共通する背景のようなものがみえてきそうだ。それこそが田島さんが新著でテーマにしているものであろう。

小津・黒沢~アニメ、コミケ 日本に高い関心

   田島さんによるとイタリア人は概して「日本と日本人に対して高い関心と尊敬の念を抱いている」という。とくに高齢者の間では「戦後の復興の苦労を味わった同胞という意識があり、急速な経済発展を果たしたことにあこがれの気持ちがある」とも。また、中高年世代が小津安二郎、黒沢明から北野武監督までの名作映画に大きな影響を受けている一方、テレビでは日本のアニメが数多く放送されているほか、ゲームなど日本発のサブカルチャーもおなじみという。

   コスプレイベントやコミックマーケット(コミケ)も大規模に行われており、北部トスカーナ州の中世の都市、ルッカで毎年開かれている「ルッカ・コミックス&ゲームズ」は欧州で最大規模を誇るコミケとして愛好家らに知られている。

    イタリアと日本は気候風土がとてもよく似ており、火山や温泉、地震があることも共通する。人々が義理人情にあついところも相通じると田島さん。だが「国民性はまさに正反対」。新著につづられたその具体例が、われわれが幸せにいきるためのヒントになるという。

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