ウルフルズ、「日本のロック」
  バカヤローと抱きあって泣く

   タケ×モリの「誰も知らないJ-POP」

   アルバムの1曲目が始まった時、思わず姿勢を改めてしまった。襟を正した、というようないかめしいものではない。むしろその逆である。「何じゃこりゃ」という驚きも混じっている。しばらく聞いているうちに顔がほころんでしまう。ウルフルズの新作アルバム「人生」の1曲目「せやなせやせや人生は」は、そんな曲だった。

   あっけにとられるほどに痛快な、とでも言おうか。

   さあ、何でもいらっしゃいと言わんばかりのバイタリティとエネルギーが満ちあふれている。酸(す)いも甘いも飲み込んでしまうたくましさと力強さ。盆踊りなどでおなじみの音頭とソウルミュージックやリズム・アンド・ブルースの重心の低いリズムが一体になって迫ってくる。中には三波春夫や村田英雄などの民謡や浪曲出身の歌手を連想する人もいるかもしれない。でも、奇をてらっている感じはない。堂々と胸を張った歌と演奏。それは、日本のロック以外の何物でもなかった。


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バカヤローの方が松本らしい

   関西弁と標準語のいくつかの違いの中に、「温度感」があるように思う。時に標準語が杓子定規で冷たく聞こえるのも同じ理由だろう。関西弁の持つ人情味や庶民性。ウルフルズは、そういう個性を感じさせる数少ないバンドだ。涙と笑い。きれい事や建前ではない本音。アルバム「人生」の2曲目「もーあかんブギ」は戦後の歌謡曲に衝撃を与えた関西出身のブギウギ歌手、笠置シヅ子さんを彷彿とさせる関西弁のストーリーソング。3曲目のタイトルは何と「バカヤロー」だ。「人生のバカヤロー」と歌い放っている。60年代頃の青春ドラマの主人公が海岸線に沈む夕日に向かって叫んだりする台詞ではない。そんなことで何かが変わったりするわけはない、と知ってしまった大人のはにかみも交えた「バカヤロー」だった。

「最初は、もっと気取った歌詞だったんですよ。人生は儚いとか、切ないとか、良いことを歌おうとしてて行き詰まっていたんです。ジョンBの『バカヤローの方が松本君らしいんじゃない』という一言で吹っ切れました」

   作詞作曲をしているヴォーカルのトータス松本は、筆者が担当しているFM COCOLOの番組「J-POP LEGEND FORUM」のインタビューでそう言った。

   ウルフルズはトータス松本(V)、ウルフルケイスケ(G)、ジョンB(B)、サンコンJr.(D)という4人組だ。88年に結成され92年にメジャーデビュー、今年は25周年にあたる。14枚目のアルバム「人生」は、その記念アルバムということになる。

   彼らに鮮烈な印象を受けたのは94年に4枚目のシングル「借金大王」を聞いた時だ。「貸した金返せよ」と歌う破天荒さは、小室哲哉プロデユースのダンスミュージックやビジュアル系ロックバンドが全盛だった当時のJ-POPの常識外だった。感情をストレートに歌う持ち味が受け入れられたのは、95年の大ヒット「ガッツだぜ!!」や「バンザイ~好きでよかった~」(96年)が証明している。

「でも、当時は、あんなに思いつきのように作った曲がヒットしてしまって、これで良いんだろうかって悩んだりしてました。根が生真面目なんで(笑)」

みんなの中に自分のウルフルズ像が

   ウルフルズは25年の間に、二度の転機を迎えている。一度は、99年にメンバーのジョンBが脱退した時だ。残った3人で精力的な活動を続け、2002年に再び4人に戻った。そして、2009年に活動を休止、それぞれがソロ活動をする中で2014年に再始動。新作アルバム「人生」は復活3作目、メンバー4人が全員曲を書くなど、新たな一歩を踏み出している。

「これまではどこかで一人で背負っている意識がありましたけど、今は、ソロをやったりして、みんなの中に自分のウルフルズ像が出来ているんだと思うんです。それが良い形で出ました。このバンドでなければ出来ないアルバムになりました」

   涙と笑いは表裏一体だ。悲しい時ほど笑いたくなるし、笑える自分でいたくなる。反対に笑いながら涙してしまうときもあるだろう。そして、何よりもその両方の感情を受け止めてくれる相手がいるかどうかで、その人の人生の豊かさが決まるのかもしれない。

   「バカヤロ-」では、「人生のバカヤロー」「人間のバカヤロー」とも歌っている。いい年をした大人が「バカヤロー」と言いながら抱き合って泣いている。「嬉しくて嬉しくて 肩を叩き合いながら」だ。

   人情味溢れる人生ソングーー。

   「せやなせやせや人生は」をライブで聞いてみたいと思った。

(タケ)

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