2018年 7月 23日 (月)

〈打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?〉
観客を子供の世界にタイムリープ アニメ版で幻想的に

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(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会
(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

   夏休み。海辺の町で暮らす中学生たちは、花火大会を前に「打ち上げ花火は横からみたら丸いのか? 平たいのか?」という話題で持ちきりになっていた。そんな中、クラスのアイドルであるなずな(広瀬すず)が母親(松たか子)の再婚のため転校することになった。

   なずなに思いを寄せる典道(菅田将暉)は、転校をしたくないなずなから「かけおち」に誘われるが、なずなは母親に連れ戻されてしまう。泣き叫ぶなずなを前に無力な気持ちを抱える典道。その時なずなのトランクケースから玉が落っこちる。典道がその玉を無意識に投げつけると、時間が巻き戻る(タイムリープ)するのであった。

   1993年にフジテレビ系列で放送されていたテレビドラマ『if もしも』は分岐点に置かれた主人公が選択Aと選択Bのその後の展開を描いたドラマであり、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』はこのシリーズから生まれた。

   脚本・監督の岩井俊二は、テレビドラマとしては異例である日本映画監督協会新人賞を受賞し、アニメリメイク作となった本作は、『バクマン』『モテキ』などの監督作品で知られる大根仁が脚本を担当。『魔法少女まどか☆マギカ)』などの新房昭之が総監督を務め、『千と千尋の神隠し』などの原画を手がけてきた武内宣之が監督を務め、制作は『<物語>シリーズ』などのシャフトというアニメファンにとってはワクワクする製作陣容となっている。

   実写版とは違い、小学生だった登場人物たちを中学生に置き換えているのは、商業的な狙い――恋愛要素を押し上げるためだ。打ち上げ花火を下から見るとどんな形なんだ、横から見るとどんな形なんだという疑問の純真性は実写版に劣る代わりに、本作は子供から大人へ移行していく思春期特有の危うく揺れ動く「感情と発育」を実写では到底できない手法で、信じられないほどに美しく幻想的に描ききっている。どの角度から見ても花火は花火という結論に至らない――夜空に上がる花火は典道にとっては、なずなそのものであり、男子のグループから見るなずなと、1人の男として見るなずなは、確かに違うのだ。

   ドラマ版が放映されていた1993年から世界は大きく変わった。歳を取れば取るほど"if もしも"が想起されることが多くなるだろう。あの時我々は花火を何処から見ていたのか、今、我々は花火を何処で見ているのか。今までの我々の人生に幾つもあったであろう"if もしも"という美しさと残酷さが、典道となずなが逃げたくても逃げられなかった「子供の世界」に観客をタイムリープさせる。

   おススメ度 ☆☆☆☆

丸輪 太郎

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