2024年 4月 20日 (土)

北京五輪パンフにハルヒ似漫画 便乗商法に早くも不安の声

   中国語アマゾンのサイトで販売されている北京五輪紹介とみられるパンフレットの表紙画が、日本の人気漫画の少女キャラクター「涼宮ハルヒ」に似ているとネットで話題になっている。2008年8月の五輪開催を控え、関係者からは早くも著作権侵害の便乗商法を心配する声が出ている。

アマゾンの中国語サイトでパンフ販売

北京五輪パンフレットの表紙画(左)と「涼宮ハルヒの憂鬱」の表紙画
北京五輪パンフレットの表紙画(左)と「涼宮ハルヒの憂鬱」の表紙画

   北京五輪のパンフレットが販売されているアマゾンの中国語サイトでは、表紙に描かれた漫画を見ることができる。テニスラケットを手にした少年少女のイラストで、少女が涼宮ハルヒに似ているというのだ。パンフには、表紙に北京五輪のロゴマークが入っており、2007年7月に発行されたとある。中国人選手や競技場とみられる写真が掲載されたページも紹介してある。

   確かに、03年6月に発売された角川スニーカー文庫「涼宮ハルヒの憂鬱」(著者・谷川流、イラスト・いとうのいぢ)に描かれた表紙画と比べてみると、顔つきや髪のリボン、セーラー服などに共通点が見られる。このパンフの表紙画が最初に紹介されたのは、日韓翻訳掲示板の「enjoy Korea」とみられ、08年1月24日だった。最近、中韓のネットバトルが話題だが、なぜこの掲示板で取り上げられたのかは不明だ。その後、ブログなどで話題になり、2ちゃんねるでも29日ごろからいくつかスレッドが立つようになった。

   ハルヒの作者サイドは、パンフの表紙画をどう見るのか。文庫本発行元の角川書店の管理部は、J-CASTニュースの取材に次のように答えた。

「確かに、ハルヒに似ていると言われるのはわかりますし、それに似せて表紙画が描かれたとすれば、とても残念です。ただ、セーラー服、ポーズなどが似ているといっても、絵そのものは似ても似つかない類のものです。ハルヒに比べて描写力に差がある稚拙なイラストで、似ているというのは作者に失礼なほどです」

   このため、表紙画だけで著作権侵害か判断するのはかなり難しいという。管理部では、「漫画のトレース、似せて書いたことが分かるほど、表現が似ていないと侵害を指摘できません。パンフレットを入手し、中身にキャラクターが使われていないかどうか確認してから、対応を検討したい」と話している。

公式のものとは確認できず

   ところで、このパンフレットは、中国の五輪組織委員会が発行する公式なものなのだろうか。

   J-CASTニュースでは1月29日、組織委に直接メールを出してみたが、同日夕までに返答はなかった。そこで、中国大使館文化部に聞くと、文化部の担当者は、パンフが中国・浙江省の出版社から発行されたと説明した。同部は、組織委から毎月1回「北京オリンピック2008」という公式冊子が送られてくるとしたが、「パンフレットが組織委の出したものかは確認できない」と話した。表紙画がハルヒに似ていることを指摘すると、「表紙画の写真だけで著作権のことは言えないので、コメントする立場にはありません」と答えた。

   日本オリンピック委員会(JOC)にJ-CASTニュースが取材すると、「このパンフレットは、見たことがありませんね。北京五輪のロゴがあったとしても公式か分からないので、コメントしようがないです」(強化部)とのことだった。角川書店でも、「公式パンフレットかどうか調べている最中ですが、国営の出版社とはとても思えません」としている。

   中国では、日本の漫画を含めて、多くの模造品、海賊版が販売されているとたびたび報道されている。中国政府も、こうした著作権侵害物をなくそうと対策に躍起な様子だが、北京五輪は絶好の商機だけに侵害物の氾濫を懸念する声が出ている。

   著作権問題を担当するJOCマーケティング室では、「著作権がらみで、今のところ具体的な問題はありません。しかし、今後は、キャラクターグッズなどで権利侵害の懸念はあります」と言う。また、角川書店では、「北京五輪関係など中国で、当社コンテンツの著作権侵害を巡って訴訟や刑事告訴になった例はまだありません。しかし、その心配はあります。パンフレットのケースは、とても中国らしいですね。当社の雑誌で連載している『ケロロ軍曹』の漫画は、真似しやすいので警戒しています。著作権がまだ十分に守られているとは言えない状況なので、中国政府には侵害は困ると伝えてあります」と話している。

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