2024年 4月 28日 (日)

武田薬品、外国人をいきなり社長に抜擢 ライバル企業からヘッドハンティングも異例

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   国内製薬メーカーの雄、武田薬品工業の次期社長に、外国人が初めて就任する。しかも内部登用ではなく、ライバル企業からのヘッドハンティングという異例の抜てき。世界で競争力のある企業として成長し続けるために、国籍、人種、性別にこだわらない「最適な人物」を選び、新興国市場の開拓に力を入れる考えだ。

   新社長に就任するのは、英大手グラクソ・スミスクライン(GSK)のフランス人幹部、クリストフ・ウェバー氏(47)。

ベルギーにあるGSKワクチン社の社長務める

次期トップは外国人(画像は「武田薬品工業」サイト)
次期トップは外国人(画像は「武田薬品工業」サイト)

   ウェバー氏は仏リヨン第1大学で博士号を取得したあと、GSKに入社。2008年から2010年までは、シンガポールでアジア太平洋地域を統括する上級副社長を務め、その後、ベルギーにあるGSKワクチン社の社長に就任した。GSKは日本での知名度は高くはないが、武田よりも規模が大きい。

   14年4月までにCOO(最高執行責任者)として武田に入社し、6月下旬の株主総会を経て代表取締役社長COOに就く予定。長谷川閑史社長は、会長CEO(最高経営責任者)となり、その後1年をめどに、CEO職を譲る見通しだ。

   日本企業のトップに外国人が就くこと自体は、そう珍しいことではない。近年では日産自動車のカルロス・ゴーン氏▽ソニーのハワード・ストリンガー氏▽日本板硝子のスチュアート・チェンバース氏▽オリンパスのマイケル・ウッドフォード氏などがいる。ただ、これまでは資本提携先からの招へいや、自社の海外法人からの登用といったケースが多く、ヘッドハンティングでいきなり社長というケースは極めてまれだ。

従業員約3万人のうち、3分の2は外国人

   武田は早くから積極的に海外展開してきた。2008年には米バイオ医薬品会社、2011年にはスイスの製薬大手と、2社を計2兆円かけて買収。欧米中心だった販路は、ロシアやブラジルなど新興国を含む70カ国以上に広がり、今や売り上げの過半数を海外で稼ぐ。従業員約3万人のうち、3分の2は外国人だ。海外販売や財務などを担当する経営幹部にも外国人が就いている。

   それでも世界の医薬品売上高ランキングでは、トップ10にも入らない。米ファイザーやスイスのノバルティスなどと比べると、売り上げは半分以下だ。糖尿病薬の特許切れなどの影響で事業環境は厳しさを増す中、投資に見合った成果を上げていないとの指摘もある。

日産ゴーン氏のような「成功例」はまれ

   かつては後継について「日本人が望ましい」と発言したこともある長谷川社長だが、日本人、外国人問わず1年以上前から選考に着手していた。その結果、英、米、シンガポールなど7か国で勤務経験があり、先進国、新興国ともに精通するウェバー氏に行き着いた。

   1781年に大阪で創業した武田。2003年に長谷川氏が社長に就任する前は、創業家の武田国男氏が社長だった。それから10年あまりで、外国人がトップの座につくことになる。20世紀には考えられなかった経営体制の激変といえる。

   ただ、これまでは日本企業の外国人トップが、必ずしも豊かな実績を上げてきたとはいえない。日産のゴーン氏は大規模なリストラを断行し、経営危機に貧していた日産を復活させたが、こうした「成功例」はまれだ。ソニーのストリンガー氏は主力のテレビ事業が低迷したまま退任した。日本板硝子も、社長在任期間は短かった。

   ウェバー氏が武田の企業文化を理解し、グローバル企業としてリーダーシップを発揮できるか。その手腕が注目される。

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