2024年 5月 3日 (金)

【J-CASTが見た2013年】第6回
防空識別圏めぐり日中の「空」に緊張走る 頼みはやっぱり「蒼井そら」?

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   2013年も中国からの話題に事欠かない1年だった。とりわけ防空識別圏の設定をはじめ、中国の強硬姿勢は日本に衝撃を与えた。一方、AV女優・蒼井そらさんの一挙手一投足に中国のファンが盛り上がるなど、緊張関係を和らげる話題も少なからずあった。

   10月から好評販売中の電子書籍「仰天!中国」では間に合わなかった話題も含め、J-CASTニュースでアクセスランキングの上位に入ったニュースを中心に、この1年を振り返る。

読み違えた防空識別圏の設定

尖閣諸島まで含む中国の防空識別圏(画像は新華社通信のウェブ版より)
尖閣諸島まで含む中国の防空識別圏(画像は新華社通信のウェブ版より)

   この1年、中国の強硬姿勢は日本を驚かせ続けた。年始には中国艦による自衛隊艦へのレーダー照射事件があり、その後も中国艦は尖閣近辺で何度も日本の領海を侵犯し続けた。なかでも11月、中国が一方的に提示した防空識別圏は日本のみならず、周辺国を巻き込んだ騒動となった。

   得意満面で発表した防空識別圏だったが、日本、アメリカ、韓国から大きな反発を呼ぶ。日本による猛抗議以外にも、アメリカが直後に爆撃機B52を中国の防空識別圏内で飛行させるなど、中国の行動は支持を得られず、国際社会で一時孤立したようだった。

   こうした情勢を中国の安全保障に詳しい研究者は「中国には読み違えがあった」とみる。実は、2012年に開かれたトラック2(民間有識者を含む意見交換)会合で、中国側の出席者が、日米の出席者から防空識別圏についてレクチャーを受ける場面があったという。中国の防空識別圏に対する理解がどの程度であったかを示す一挿話であろう。

   日本政府の意向を受け、日本航空や全日空は中国へ飛行計画を提出しない方針を打ち出したが、他国の航空会社の対応は異なった。アメリカの民間航空各社が飛行計画を任意で提出。東南アジア各国の航空会社もそれに続いた。日中の防空識別圏について、各国の足並みはそろっておらず、「中国の完敗」はまだ決まったわけではない。

   なお、防空識別圏の設定について、習近平総書記が軍部の動きを知らなかった、または止められなかったのではないという見方もあった。しかし、習氏が委員長を務める中央軍事員会委員から支持されたことが香港の「フェニックステレビ」などで報じられており、また10月に開催され、習氏が出席した対外政策の会議でも防空識別圏の話題が出たという。「聞いてはいるが、やるなとは言わない」(前述の研究者)というのが実情のようだ。いずれにせよ、今後もこうした事案は起こりうるだろう。

高笑いから一転した韓国

   また日中の摩擦は韓国でも波紋を広げた。中国の防空識別圏設定をめぐり、韓国ではすわ日中開戦か、と大盛り上がりしたことはJ-CASTが伝えた通りだ。しかも、一部ネチズンによるいつもの勇猛な意見だけでなく、「アジアの盟主争奪戦…第3次日中戦争の導火線に火」(ヘラルド経済)、「日中戦争のシナリオ」(アジアトゥデイ)とメディアも扇情的な見出しで記事を書いた。

   しかし、その後に韓国も防空識別圏の拡大を発表。中韓両国が主権を主張する離於島を含む範囲であり、日中韓の3国が東シナ海上空で緊迫したムードで対峙を続けている。

   そのほか、無人機による戦争が行われるのではないか、と煽り立てる中国メディアもあり、尖閣周辺は海だけでなく空でも軍事的緊張が続いた1年だった。

「日本のもの以外は市場に残らない」

   では日中関係改善のきざしはあったのだろうか。

   実は、中国に関する記事で最もアクセスがあったのは、AV女優の蒼井そらさんの中国での人気ぶりを伝える記事だ。彼女が処女であることを自身のツイッターで告白すると、中国のファンは色めき立ち、ウェイボーなど中国のネットは興奮のるつぼと化した。もちろん彼女の職業柄、ことの真偽は不明だが、現地メディアでも取り上げられ、大きく盛り上がった。

   政治上の摩擦があるのに、どうして中国人は日本のアダルトビデオをはじめとするアニメや小説のコンテンツに関心を持つのか。日本の文化を伝える中国の雑誌「知日」の主筆で神戸国際大教授の毛丹青さんに話を聞くと、小説やアニメなど日本の文化は、中国でも圧倒的な人気だと強調する。

   「知日」は鉄道や制服、猫、森ガールなど毎回テーマを絞って特集を組み、日本文化のコアなファンに受けている雑誌だ。毛さんは「知日」の売れ行きについて、「中国の雑誌市場で生き残れる外国に関する雑誌は、日本のものだけだ」と語る。

   市場経済が進む中国では雑誌や書籍は売れるものを作らないといけない時代になった。将来的には「知米」や「知欧」を創刊したいと考えているが、日本の文化を紹介するもの以外には現在の競争下で勝ち残れないという。日本の週刊マンガ誌が発売から数日以内にネット上にあふれたり、アニメが違法にアップロードされたりするのは、著作権の問題はありつつも、中国人の関心の高さの裏返しだ。

   毛さんは「知日」について、「ビジネスとして成功するから出版が続けられる。それだけ日本文化への理解は成熟している」と話す。

   また、「知日」でAVまたは蒼井さんを特集するか質問すると、毛さんは、年齢的に詳しくないがと断りつつ、「売れるでしょうね」と話した。

摩擦の解決策は外相「蒼井そら」

   以上、見てきたアクセスの多かった記事をまとめると、

1位:AV女優の蒼井そら「私は処女。30歳までに捨てたい」 中国のメディア大報道でオタクが大興奮状態に!!!(5月8日)
2位:防空識別圏で中国外交が屈辱的大敗北 国際的に完全孤立、自衛隊機にも手出せず(11月28日)
3位:「中国と共倒れしろ」「ついでに日本を占領だ!」 防衛識別圏で「日中戦争」期待する韓国ネット民(11月27日)

という結果に。緊迫した防空識別圏のニュースを抑えて、意外にも蒼井そらさんの話題が1位となった。

   そのほかアクセスを集めた記事には、川でおぼれている男児を救出した中国人留学生に両国から賛辞が寄せられたこと日本語学習者が最も多いのは中国人だったことなどがあり、必ずしも日中間の険悪なムードを伝える出来事ばかりではなかったことが分かる。

   1位の記事には、「蒼井そらが外務大臣担ったら尖閣諸島もんだいも平和的に解決出来るんじゃないかな?(原文ママ)」というコメントも寄せられた。こじれた国境問題を解決できるのは、「国境を超えて愛される人」だということを言いたかったのかもしれない。

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