2024年 4月 25日 (木)

赤旗も引用した読売「カジノ法案」社説  全国紙、珍しく「反対」で一致

   「わずか約6時間の衆院審議で、様々な問題をはらむカジノを賭博の例外扱いにしようとする。あまりに乱暴かつ無責任だと言うほかない」

   開会中の臨時国会の最終盤の焦点になっているカジノ解禁法案について、2016年12月7日の新聞の社説の書き出しだ。朝日や毎日ではない。他でもない、日ごろ安倍晋三政権の政策に肯定的な論調が目立つとされる読売の社説なのだ。

  • 全国紙5紙がこぞって反対
    全国紙5紙がこぞって反対
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自民党は12月14日までに可決の構え

   同法案は、正式には「統合型リゾート(IR)整備推進法案」といい、カジノをはじめ会議場、ホテルなどが一体となった施設(IR)の整備という大枠を整え、政府が1年以内をめどに、カジノ運営のルールなどを定める別の実施法を制定するとしている。要は、刑法で禁じている賭博の例外として、カジノを解禁するものだ。

   「国際観光産業振興議員連盟」(カジノ議連、会長・細田博之自民党総務会長)が旗を振る議員立法だが、安倍政権はIRを成長戦略の一環と位置付け、安倍首相自身がかつて、議連の最高顧問を務め、シンガポールのカジノを視察、この12月7日の党首討論では「さまざまな投資が起こり、雇用がつくられる」と効果を強調しており、安倍政権肝入りの法案といえる。

   しかし、法案には、「ギャンブル依存症」の広がりによる犯罪や自殺の増加、青少年への悪影響、さらに資金洗浄(マネーロンダリング)や反社会的勢力の関与を懸念する声も強い。期待される経済効果についても、マカオなど東アジアではカジノが乱立で市場が飽和状態にあり、過剰な期待を戒める声も多く、大阪へのカジノ誘致を熱望する日本維新の会などを除き、野党が強く反対している。

   法案は衆院内閣委員会で審議が始まった11月30日からわずか1週間の12月6日に衆院を通過した。この間、内閣委員会の審議時間わずか6時間足らず。与党の公明党は意見集約ができず、党議拘束を外す異例の展開に。自民党は12月9日の成立を打ち出したが、参院の内閣委員長は民主党が握っていることから、委員長職権での強引な議事運営ができず、ひとまず12日に参考人質疑をするところまで決まった。自民党は14日までの会期内に成立させる構えで、委員長が採決しなければ本会議にいきなり上程して可決する「ウルトラC」も検討しており、ギリギリまで緊迫の展開が続くのは必至だ。

賭博の本質をずばりと

   カジノ解禁法案には、読売とともに常日頃、安倍政権支持の論調を展開する産経も含め、全国紙5紙がこぞって反対の社説を掲載するという近年にない事態になっている。なかでも、読売の紙面展開と論理の切れ味が光る。

   2日朝刊の社説で「人の不幸を踏み台にするのか」という超厳しい見出しを掲げ、「そもそもカジノは、賭博客の負け分が収益の柱となる。ギャンブルにはまった人や外国人観光客らの『散財』に期待し、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全である」と断じた。他紙を見回しても、見出しを含めて賭博の本質をここまでずばりと言い切ったものはないほどだ。

   衆院内閣委での可決の翌3日朝刊では、各紙1面に「可決」の本記を書き、2、3面で関連記事を掲載したが、読売も、1、3、4面という多面展開で、1面の見出しで「審議6時間で」と、「拙速」をなじり、3面で「突貫審議」「自民一転 成立に期待」「公明 意見集約間に合わず」と、与党の「ドタバタ劇」を解説し、4面では「カジノ法案 民進の壁」との見出しで、参院内閣委の民進の委員長の抵抗を「期待」するかのようなトーンの読売紙面だった。

   読売は5日朝刊1面で、世論調査(2~4日実施)の結果を「カジノ解禁 反対57%」と報道。衆院通過後の7日朝刊で再び取り上げた社説の書き出しが冒頭のもので、「参院では、今国会中の採決にこだわることなく、より慎重な審議に努めることが求められよう」「議員立法の法案は本来、丁寧に手続きを踏み、各党の幅広い合意形成を図るのが常道である。今回のように、強引に採決に持ち込む手法は、今後の国会運営にも禍根を残しかねない」など、強引な審議を真っ向批判した。社会面でも「カジノ解禁 懸念の声」「若者 金銭感覚マヒ・資金洗浄に悪用」など問題点を指摘し、世界最大のカジノ街・マカオのルポで抱える問題をえぐった。

産経も「懸念解消を先送りするな」

   さらに、党首討論の翌8日朝刊では2面で「初陣蓮舫氏 カジノで攻め」と大きく見出しを付け、首相の反論も掲載しつつ、全体のトーンは珍しく民進に好意的な記事を掲載。さらに、同日の社説で党首討論を取り上げ、ここでも「首相はカジノの説明を尽くせ」との見出しを掲げ、異例のカジノ社説2連発。「首相は以前、法案を作成した議員連盟の最高顧問を務めた。カジノを推進するなら、その経済効果や、副作用の対策について、自ら丁寧に説明する責任がある」と、首相に真っ向、直球を投げつけ、週内成立断念を受け、9日朝刊4面政治面では「逆風カジノ自民足踏み」との記事に紙面の右半分を割いた。

   他の全国4紙の社説(産経は「主張」)も、朝日が「危うい賭博への暴走」(2日)、「『数の力』を振り回すな」(6日)、「党首討論 安倍さん、あんまりだ」(8日)と3連発、毎日も「唐突な採決に反対する」(2日)に続き、8日は「再考の府も審議放棄か」「党首討論 もっと時間を延長せよ」と、2本の社説両方でカジノを論じる珍しい紙面。日経は「拙速なカジノ解禁は問題多い」(3日)「党首討論は国の針路問う場に」(8日)と連発、産経も「懸念解消を先送りするな」(2日)と反対の姿勢を示す。

   共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は3日、「人の不幸を踏み台にする」という読売社説のタイトルを見出しに引用し、「読売、産経も批判」と書きたてている。

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