職場の嫌がらせのうち、性的な要素を持つ「セクシャル・ハラスメント」や、職権を濫用して行う「パワー・ハラスメント」の問題点は、社会的に認知されつつある。しかし、その概念では捉えきれない「モラル・ハラスメント」が最近増えているという。明らかな暴力や暴言とは言えない、分かりにくく陰湿な攻撃である。
K子さんは、事務職のチーフとして新しい職場に赴任した。ある日、ベテラン事務員のA美さんと、ちょっとした意見の対立から言い合いになった。その場は収まったものの、翌週からA美さんの攻撃が始まった。
K子さんの提案に対して、A美さんは「違います」「それじゃダメです」と、強い調子でことごとく否定するようになった。しかし実際には、提案はひそかに上司に取り入れられ、A美さんの手柄になっているのだ。
またA美さんは「チーフは何でこんなことしたんですか!」と非難したり、K子さんの説明に顔をしかめて首を傾げたり、大きなため息をついたりするようになった。視線も合わせず、K子さん以外の同僚を連れてランチに出かけた。そんなことが毎日続くうちに、K子さんは出勤前に憂鬱になり、吐き気を催すようになった。
さらにA美さんは、社内のあちこちで噂を立てた。「K子さんは仕事ができない」「全体がぜんぜん見えていない」「チーフらしいことを何もしていない」などと吹聴。いつしかK子さんから笑顔が消え、以前では考えられなかったケアレスミスを連発するようになった。本当に仕事ができなくなったK子さんは、退職を余儀なくされてしまった・・・。
(続く)
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