2024年 3月 29日 (金)

異動して1週間 「営業は合わないから変えて」と言われました

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   勤め人には異動や転勤がつきものだが、最近は社員の希望に応じる流れになっているようだ。

   とはいえ、「異動して1週間で再異動したい」という申し出に応えるのは難しいだろう。どう対処すべきなのか、隠れたリスクはないのか。

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「親が怒っているので休職やめて」

――中堅商社の人事担当者です。入社2年目の総務部の女子社員から強い要望があり、今年度から営業部門に異動させました。ところが、異動の1週間後に相談したいことがあると連絡があり、会議室に行くといきなり「私には営業は合いません。別の部署に異動させてください」と言うではありませんか。
   何かあったのかと聞くと、とにかく異動させて欲しい、の一辺倒。気分が悪くなったというので、社内の医務室に連れて行きました。居合わせた看護婦には

「会社に行こうとすると頭痛や吐き気がする。部署が変わったら治ると思う」
と訴えたようです。
   看護師が「専門医に診てもらったら」と言ったところ、さっそく病院に行って「適応障害で休職を要する」という診断書を持ってきました。そこで休職の手続書類を手渡すと「家にいると父親がうるさいので、会社には来たい」と言い張ります。
   聞くと、父親は「会社が社員の希望を聞くのは当たり前だろう? 俺が行って話をつけてやる!」と息巻いているのだそうです。本人は「職場の仲間に迷惑をかけているので、休んでいていいものかと…」と言って、休職よりも配置転換して欲しいと繰り返します。
   入社時の履歴書には「健康」と書いてありましたが、どうやら自律神経失調症の既往症があったようです。一人娘で大切に育てられたらしいのですが、私には父親のプレッシャーも原因のひとつになっている気がしてなりません――

臨床心理士・尾崎健一の視点
希望を聞き取り「病気」「いじめ」などの原因も確認

   このようなケースでは「もう少し頑張って」と言ってみても、仕事を続けさせるのは困難だと思われます。まずは「営業の何が合わなかったのか」「次はどういう理由でどの部署に行きたいのか」を確認しておく必要があるでしょう。ここがあいまいでは、次の手が打てませんし、次でも同じことが起こる可能性があります。場合によっては秘密を守れる第三者(カウンセラーなど)の手を借りることも考えられます。

   そもそも営業部門への異動も、積極的な希望ではなかった可能性もあります。原因が本人の病気なのであれば、家庭の事情はあるにしても治療的側面から休職してもらわざるを得ません。また、「社内いじめ」などの兆候がある場合には、別途調査が必要です。

   なお、適応障害とは、ストレス障害の一種です。軽度のうつ病(気分障害の一種)と区別がつきにくく、放置するとうつ病になることがあります。対応としては、投薬と並行して、ストレスの原因を排除することが必要になります。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「親のクレーム」がヤブヘビにならぬよう法令順守を徹底

   人材をどの部署に配属するかということは、原則として会社の専権事項です。社員の希望を認めなくても法的に問題ありません。今回の再異動の希望は、よほどの理由や必要性がなければ認められないというのが普通の考えでしょう。

   本人は「部署が変わったら治る」と言っているようですが、その保障はないので、医師の指示に従い、必要があれば休職してもらいます。職場の仲間が望んでいるのは、きちんと治して復帰することです。復帰は原職(休職前の職場)が原則ですが、今回の場合は事務でリハビリをして、仕事に慣れたらあらためて希望を聞くのがよいでしょう。

   なお、親とのトラブルが感情的にこじれると「この会社は時間外管理がきちんとされてないじゃないか!」などと、思わぬ問題に波及しかねません。会社は日ごろから法令順守を徹底しつつ、トラブルを穏便に収めてもらう努力をしたほうがよいと思います。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

今、希望通りの仕事に就いている?
希望通りの仕事に就いている
あまり希望通りでない
希望に反した仕事だ
もともと特に希望はない
今は仕事に就いていない
尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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