2024年 3月 29日 (金)

天下り禁止「ようやく霞が関も民間に追いつく」というだけの話

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   長らく「キャリア官僚の天下り根絶」を公約に掲げてきた民主党が、いよいよ政権与党となった。もちろん、言うだけなら簡単なことだ。歴代の自民党政権にしても、そういう政策は掲げ続けてきたわけで、どこまで実を結ぶかは今後の民主党次第だろう。

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天下りは霞が関の「年功序列制度」を維持するための「動脈」

   そういう意味では、「天下りを受け入れたら補助金削減します」と赤松農相が明言するなど、今のところうやむやで終わらせるつもりはないようだ。霞が関の僕の友人の中には、すでに転職活動を始めた人間もいる。

   ところで、彼ら官僚が、そうまでして天下りに執着する理由とはなんだろう? 結論から言うと、彼ら自身の年功序列制度を維持するためだ。

   民間と違い、彼らは法律によって組織が決められているため、基本的にポストが増えることはない。つまり「長い下積みを頑張った官僚たち」に出世で報いるためには、外部にポストを確保しないといけない。それが独立行政法人や特殊法人などの天下り団体であり、そこを経て様々な民間企業に散らばっていくわけだ。天下りとは、彼らの年功序列制度を維持するための動脈のようなものである。

   仮に、民主がいうように、天下りを根絶すれば何が起こるか。次官や局長といった高位ポストには、ベテランが定年まで在職することになり、それより下も流れが停止してしまう。キャリア官僚であれば、従来は課長級までは誰でも上がれたものが、これからは半分以下になるだろう。

   下がるのは肩書きだけではない。官僚の給料は指定職まで出世しないと民間大手企業より低いので、たとえば局長を経験して天下った90年代の先輩方と比べると、生涯賃金も半分以下になるはずだ。文字通りの"飼い殺し中産階級"である。

「長期雇用を維持」しながら組織活力を損なわない方法はあるのか

   とはいえ、別に驚くようなことではない。そんなことはそこら中の大手企業でも10年前から起きていることだから。"天下り"というインチキを取り上げられて、ようやく霞が関も民間に追いつくというだけの話だ。

   ひょっとすると、本連載を読まれて、思い悩まれている官僚もおられるかもしれない。特に、激務薄給に耐え、さあこれからだと期待していた40歳前後の人間は不安にさいなまれているはず。

   だが、心配には及ばない。なぜなら、雇用問題のスペシャリスト、厚生労働省は、こういった状況が予想されていたにも関わらず、「労働経済白書」(平成21年版 労働経済の分析)において「長期雇用システムの維持」を強く主張しておられるからだ。きっと我々下々には思いもつかない、素晴らしい人事制度プランをお持ちなのだろう。

   これまでどおりの日本型雇用を維持しつつ、組織活力も損なわない魔法のような人事制度を、身をもって示していただきたい。天下り抜きでね。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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