2024年 4月 16日 (火)

日本の「マスゴミ」そんなに劣っているのか フランス人記者の「批判」に反論する

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「頭を使わずただ社会の動きを記録する監視カメラのようなものだ」
「記憶力もない。10分しか記憶できない金魚のようなものだ」

   フランス人記者による日本のマスコミ批判記事「政権交代でも思考停止の日本メディア」がネット上で話題になりました。内容を「痛快」と感じた人も少なくなかったようですが、留学を機に愛国主義精神が芽生えた私は、何であれ日本をガイコクジンから批判されると、つい「なにぃ!?」とムキになって反論したくなります。

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厳しい自己批判をメディアだけに求めるのはフェアじゃない

   そもそも、わが国のマスコミは、それほどまでに批判されるべきなのでしょうか?もちろん、事実の捏造や人権軽視はあってはならないものですが、これはジャーナリズムが抱える本質的な課題であり、程度の差こそあれ、どの国でも存在するものです。

   また、わが国の新聞でまだ署名記事が少ないことは、匿名による無責任で安易な批判や、論説の一貫性を検証できないという点においては、すぐにも変化が求められる点だと考えています。

   しかし、私は新政権のもと、その存続が話題になっている記者クラブ制度に関する議論については、違和感を覚えます。

   本来、情報の流通は「楽市楽座」のようにオープンであるべきものであり、それを妨げる「ギルド」とする記者クラブ制度が望ましくないことは言うまでもありません。しかし、その変革を、既得権者であるメディア自身に迫ることが、はたしてフェアなのでしょうか。

   そもそも記者クラブ制度は戦時中の翼賛体制に遡るものであり、わが国の社会経済システムに広く形を残す、官僚主導の社会主義的な「1940年体制」の一角をなすものと理解しています。NHK+民放五社による電波免許の独占も、そこから派生したものと考えられるでしょう。

   その社会体制自体がゆっくりとしか変わっていけないなか、メディアだけに厳しい自己批判と既得権益の放棄を求めるのは、ジャーナリズムに高い倫理が求められるとしても、それはいわば聖人たることを求めるものであり、いささか行きすぎではないでしょうか。

メディアも民間企業 特性を踏まえた「接し方」をすればよい

   現在、世界中のメディアは、大きな経営危機を迎えています。ニューヨークタイムズ紙のような、報道の質は疑いのない新聞であっても、自力では立ち行かなくなりつつあります。およそメディアは(国営以外は)広告収入でもって生計を立てていかなければならないのだから、そこにはいくらか中立性が犠牲にされたり、恣意性が介在してしまうことも、そしてもっている既得権益にしがみつこうとすることも、いわば織り込み済みという態度で、私たちはメディアと接するべきではないでしょうか。

   私は、記者クラブ制度は政治的な解決が求められるものであり、70年近く続いてきたものがそう簡単には変わらないように、ゆっくりと、時間をかけて変化していく類のものだと思っています。

   最後に、このフランス人記者がフィガロ紙(発行部数は30万部程度で、日本の主要紙の10分の1~数十分の1)に寄稿しているいくつかの記事を、「Google翻訳」の力を借りて英訳して読んでみました。感想としては、冒頭の記事で掲げているような、政治を見る目を養う目新しい切り口があるわけでもなく、どこかの英文記事を仏訳した程度のものでしたよ。多忙を極める日本の雑誌編集長とは違って、本業のかたわら「演劇の企画」をやる時間がある理由も、分かった気がします。

岩瀬 大輔

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岩瀬大輔(いわせ・だいすけ)
ライフネット生命保険・代表取締役副社長。1976年生まれ。幼少期をイギリスで過ごしたのち、開成高校を経て、東京大学法学部卒業。在学中に司法試験合格。ボストン・コンサルティング・グループ、リップルウッド・ホールディングスを経て、ハーバード経営大学院(HBS)に留学。日本人で4人目となる上位5%の優秀な成績(ベイカー・スカラー)を修めた。帰国後、元日本生命の出口治明氏と二人三脚で、今までの常識を打ち破る新しい生保会社「ライフネット生命保険」を立ち上げ、2008年5月に営業を開始した。近著に『東大×ハーバードの岩瀬式!加速勉強法 』(大和書房)、『超凡思考』(幻冬舎、伊藤真氏との共著)。
「生活者にとって便利でわかりやすく、高品質な生命保険サービスを提供する」という理念のもと、インターネットを主要チャネルとして、新しい生命保険を販売している。既存の保険会社に頼らない「独立系の生命保険会社」として戦後初めて免許を取得し、2008年5月に営業を開始。業界のタブーとされた「保険料の原価」を開示するなど新しい試みに挑戦している。
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