この休職者には「傷病手当金は出せません」

2010/8/27 12:08

   上場会社への調査によると、メンタル疾患での休職者は増加から横ばいになったそうだが、依然として多くの人が休職を余儀なくされている。治療に時間がかかる人も少なくないが、休職長期化の影響は思わぬところにも出てくるらしい。

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18か月の受給期間が満了していた

――サービス業の人事部で働く、入社5年目の女性社員です。以前はあまりなかった休職の手続きが、最近では目に見えて多くなりました。書類の作成にも慣れ、だいぶスラスラと手続きを進められるようになりました。
   先日も、Aさんのメンタルヘルス休職の手続きをしたばかりです。彼女は半年前に中途入社してきた30歳事務職の女性。入社直後から休みがちでしたが、最近は出社できない日が続いており、今回うつ病休職の診断書を持ってきました。
   そこでいつものように書類をまとめ、休職中に支給される「傷病手当金」の申請手続書類を健康保険組合あてに送りました。すると今日になって、健保組合から連絡がありました。

「A子さんには休職に伴う傷病手当金は出せません」
   驚いて聞いてみると、A子さんは、前の会社で18か月の受給を受けていたことがわかりました。18か月といえば、傷病手当金の上限。受給期間は所属会社や健保組合が変わってもリセットされないため、今回は支給されないとのことでした。
   健保組合が、そこまで調べているなんて…。ここ数年、健保組合の支出のうちメンタル疾患にかかわる傷病手当金の占める割合が増大しており、赤字削減のために前職の経歴まで調べる必要が出てきたのだそうです。
   健保の審査が厳しくなっていることを知り、言葉もありません。傷病手当金が出ると思っているA子さんに、この事実をどう説明したらいいのか。気の毒で頭を抱えているところです――

(続く)

尾崎 健一(おざき・けんいち)

臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て、2007年に独立。ライフワーク・ストレスアカデミー代表として企業のコンサルティングを行いながら、秋田大学医学系研究科で自殺予防の研究に携わっている。『ケーススタディ 認知行動カウンセリング』(至文堂)に執筆者として参画。共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

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