競合からスカウトしてきた本部長のやり方が古い

2010/9/10 12:00

   グローバルな競争にさらされている業界では、人材の流動化が本格化している。しかし相性やタイミングなど不確定の要素もあり、採用した人材がすぐに成果を上げるとは限らない。そんな中、ある会社の人事部には「今すぐ結果を出す人材をよこせ」というプレッシャーが強まっているという。

>>ヨソでは言えない社内トラブル・記事一覧

接待に明け暮れ期待外れ

――中堅製薬会社の人事です。業界を襲うM&Aの波に呑まれ、当社でも会社の合併に伴い、部門の再編を余儀なくされています。人の入れ替わりも激しくなり、同業他社からの中途入社も増えているところです。
   人事では現場からのオーダーを受け、ヘッドハンティング会社などと連携を取りながら必要な人材をスカウトしていますが、入社した社員が期待通りの成果を上げられないと、採用窓口の人事にも強いクレームが入ります。
   採用した人が幹部であれば、高給で処遇するので採用コストもバカにならず、本人も人事も成果を厳しく問われます。半年前に入社したマーケティング本部長のA氏も、厳しいチェックを受けつつあるひとりです。
   彼はライバル会社での実績と豊富な経験を買われ、鳴り物入りで入社してきました。「営業体制の革新」が課題で、会社や部下からの期待も非常に高いものでした。
   しかし、入社間もなく、部下たちから口々に不満の声が聞かれ始めました。
   彼らの言い分は、「A氏は仕事のやり方が古いのではないか」というもの。現在の製薬業界では、医師とのつながりの強さだけでなく、ユーザーである患者のニーズを喚起するマーケティングが重視されつつあります。
   にもかかわらず、A氏は大物医師との接待ばかり重視し、期待されていた広告代理店やPR会社との企画交渉が進んでいないというのです。新しいやり方を期待していた部下たちの信用は低下。しかし本人には自信があるらしく、

「僕はこのやり方で結果を出してきた。人のつながりをおろそかにすれば、結局マーケティングはうまくいかなくなる」
と言ってやり方を変えようとしません。まだ営業実績は昨年比で大きく変わっていませんが、このまま部下の不満が大きくなる前に、他の部署に異動させた方がよいような気がしているのですが、どうでしょうか――

(続く)

尾崎 健一(おざき・けんいち)

臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て、2007年に独立。ライフワーク・ストレスアカデミー代表として企業のコンサルティングを行いながら、秋田大学医学系研究科で自殺予防の研究に携わっている。『ケーススタディ 認知行動カウンセリング』(至文堂)に執筆者として参画。共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

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