公開の場での叱責―「スパルタ研修」でパワハラに問われるのか

2011/9/30 11:30

   若手社員を対象にした「スパルタ研修」を取り入れる企業がいまだにあるようだ。甘い学生気分を抜き、社会人としての自覚を目覚めさせる効果などを狙っているようだが、その方法には賛否がある。

   ある会社では若手の士気向上を狙い、厳しい研修を実施したところ、参加者から「どうみてもパワハラ」と苦情が出たという。

若手の消極発言に逆上「根性を叩き直す方が先だ」

――食品商社の人事です。ここのところ業績が伸び悩んでおり、役員会から「若手社員の士気が高まっていないのではないか」「たまには集合研修でテコ入れしたらどうか」と提案がありました。

   そこで集合研修を実施することになり、現場の管理職にヒアリングしたところ、

「いまの若い奴は壁に当たるとすぐ投げ出す」
「気合いが入るような厳しい研修をやって欲しい」

という要望が相次ぎました。

   講師は社外から呼ぶことを検討していましたが、営業部の次長が「そんなことなら俺にやらせて欲しい」と手をあげました。そこで1回目の講師を頼んだところ、思わぬ混乱が起きました。

   会社の過去の危機をどうやって乗り切ってきたのか、次長が話をした後、参加社員に感想を求めたところ、消極的に受け取れる発言があったのです。それを聞いた次長は、

「おいお前、仕事もロクにできない半人前のくせに、何を偉そうなことを言ってるんだ。根性を叩き直す方が先じゃないのか?」

と言って、経営理念を読み上げるよう命じました。さらに全員を立たせて大声で唱和させ、1人ずつ暗唱させました。途中でつかえると「コラッ、理念もまともに言えんのか!」と一喝します。最初に叱責された社員は「気分が悪くなった」と途中で退席しました。

   研修後、次長は「いちおう狙い通りだったろう?次回もやろうか」と満足げでしたが、参加者からは、

「こんなの何の意味があるんすか」
「どうみてもパワハラっすよね」

などという声が。次長の話は悪くなかったと思うのですが、講師やメニューは次回以降もこのままでよいものか迷っています――

(続く)

尾崎 健一(おざき・けんいち)

臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て、2007年に独立。ライフワーク・ストレスアカデミー代表として企業のコンサルティングを行いながら、秋田大学医学系研究科で自殺予防の研究に携わっている。『ケーススタディ 認知行動カウンセリング』(至文堂)に執筆者として参画。共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

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