日本の電機メーカーは「日本流」の革新を目指すべきだ

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パナソニック 44.0歳、ソニー 41.6歳、シャープ 41.9歳
アップル 33歳、サムソン 30.5歳…

   この数字が何かお分かりになるだろうか? 各企業の従業員の平均年齢である(筆者調べ、各社ディスクロージャー誌による)。日本の電機メーカーの問題には多くの要素が絡み合っているが、高齢化がその大きな要因の一つであることは間違いない。

   機械系の仕事であれば熟練の技というものがあり、ベテランにも活躍の場がある。しかしネット系では技術が日進月歩で進化しているため、どうしても若い人が有利になる。平均年齢がアップルやサムソンより10歳程度も上の日本のメーカーは、大きなハンディを抱えているといえる。

若きシリコンバレー流に圧倒されている現状

   IT分野での競争の激しさは、プロ・スポーツの世界のそれと共通するところが多い。サッカーでクラブ同士が世界一を目指すように、トップクラスの人材を有する会社が世界市場の制覇を目指してしのぎを削る。能力的には若いときがピークで、30代半ば頃から最前線の仕事は徐々にできなくなるという所もスポーツ選手と似ている。

   スポーツでは「勝たねば意味がない」と言われるが、ビジネスでは「儲けてナンボ」だ。消費者に買ってもらえる商品を売り、利益を出すことが至上命題である。それがあって初めて従業員に給料を払い、税金を納め、社会に貢献することができる。

   その競争社会の最先端を行くのが、アメリカ西海岸のシリコンバレーである。かの地では恒常的に多くの企業がつぶれていく。当然ながら雇用は不安定で、従業員はいつでもクビになる可能性がある。

   仕事もきつい。80年代にスティーヴ・ジョブズはマッキントッシュの社員が週に90時間働くことを自慢し、“90 hours a week, and loving it”という言葉の入ったTシャツまで作って配った。きっとこういうのを「ブラック企業」と呼ぶのだろう。そのかわり従業員は、頑張って結果を残せば高額な報酬を得られるわけだが…。

   一方、我が国の大手電機メーカーでは終身雇用と年功序列がその強さの源泉とされてきた。それにより長期的な経営戦略と従業員の安心が得られる、と言われた。しかし、日進月歩の変化が起きている業界で、年長者の収入や地位が高くなる仕組みが本当に適しているのか、検証が必要だ。

   ロンドン・オリンピックのとき、競技団体役員の飛行機の座席がビジネスクラスで、実際に競技を行なう選手がエコノミーということがあって批判されたが、同様なことがこの業界でも起きていないだろうか。それに、いくら従業員に対して優しくみえるシステムであっても、そのために会社が傾いてしまっては元も子もない。

モノづくりを維持しつつ、ソフト分野をグローバル化させる

   高齢化は現下の問題だが、かといってシリコンバレー流を日本全体に適用するのも無理だし、今さら同じことをしても適わない。シリコンバレーは全てにわたって自由なところが身上だが、それに勝とうと思ったら何か異なる対立軸をぶつけることが有効だ。

   そのような状況下で、日本の電機メーカーはどうすればよいか? 私は日本流をベースにしつつ、以下の3つのポイントに取り組むのがカギだと考える。

(1)モノづくりの現場については日本のメーカーに優位性があるのだから、そこを維持強化することを一つの柱とすべき。ここは中年以上の世代も大きな役割を果たせる分野だ。ただし人件費は世界水準を見据えた見直しが必要だろう。
(2)一方、ソフトの分野での能力を向上させるためには、世界の人材を結集する必要がある。イタリア人のデザイナー、ユダヤ人の数学の天才…。金太郎あめのような日本人社員だけで世界と対抗するのは困難だ。ここの部分は、従来の年功序列や終身雇用とは全く異なるマネジメントが必要になる。
(3)それとは一見矛盾するようだが、愛社精神、従業員の連帯感、職人魂、勤勉さ、生真面目さ…。こういった日本人・日本企業の強みを改良しながら、うまく活用することも必要だ。戦後の日本の繁栄はこのためにもたらされたが、このところそれが逆噴射してしまい、会社依存、形式主義、変化の拒絶といった状況に陥っているように見える。

   日本の伝統文化は完全に否定されるべきものではなく、将来の力強いパワーになり得る可能性を秘めている。日本の電機・IT産業が復活し、消費者をワクワクさせる製品をどんどん作るようになることを期待したい。(小田切尚登)

小田切尚登
経済アナリスト。明治大学グローバル研究大学院兼任講師。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ等の外資系金融機関で株式アナリスト、投資銀行部門などを歴任した。近著に『欧米沈没』(マイナビ新書)
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