「起業20年後には5割が消える」なか、「目のつけ所」で大躍進の会社

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   中小企業庁がまとめた「企業の10年後生存率」によると、1980年~2009年に創設された企業は10年後に約3割が、20年後には約5割の企業が倒産・撤退している。中小企業の栄枯盛衰はそれだけ激しいわけだ。一方、2000年以降に創設された企業のうち、中小企業から大企業に成長した企業の業種構成をみると、「情報通信業」と「医療・福祉分野」に多く、「このいずれかの業界で、ニッチな事業を見出した」企業が目立っているという(帝国データバンク調べ)。

   帝国データはこのほか、生き残る企業の特徴として、「自社のコアコンピタンスを認識し、そこに資源を集中投下している」「経営者が明確なビジョンを打ち出している」ことを挙げている。これは、中小企業がメディアに取り上げられる要素である「社会性」「ヨソにない特徴」とも合致している。2015年は、どんな中小企業がニッチな事業を見出し、社会性を引っ提げてメディアに登場するのだろう。その有力候補をご紹介したい。

専業主婦がシャンデリア業界ナンバーワンに

   EL JEWEL(エルジュエル、東京都港区)は2006年3月に、専業主婦だった森みどり社長が栃木県宇都宮市でインターネットショップからスタートした。それが、いまや「業界ナンバー1のシャンデリア取扱い数、12万超」を誇るだけでなく、ヨーロピアンスタイルのインテリア・雑貨、オーダーカーテンなどのライフスタイルをデザインする「空間プロデュース」企業として成長し、2017年に株式上場を目指すまでになった。雑誌「Big Life21」(2014年5月号)では「専業主婦の『小遣い稼ぎ』が一転、今や上場も視野に入れる一大事業に大躍進!」との見出しで紹介されている。

   森社長は広島県出身で、実家は八百屋だった。原爆の後遺症で苦しむ人たちに尽くした母の影響から、「人のお役に立ちたい、社会に貢献する企業にしていきたい」との思いが事業の原動力になっている。シャンデリアを扱うきっかけは、映画「マリー・アントワネット」が2006年に公開されて、さまざまなブランドの広告に豪華なシャンデリアが使われるようになり、「日本でも需要があるに違いない」と思ったから。そこで調べてみると、日本でシャンデリアを卸す会社は4社しかなく、そのうち1社は撤退予定だった。いわば、ニッチの事業を見出したことになる。シャンデリアというと、価格が不透明な印象があるため、価格をできる限りリーズナブルにし、明示するとともに、納期の短縮化に努めた。また、シャンデリアは落下事故の懸念を抱く人が多いため、取り付け・修理・清掃技術を磨き、「東日本大震災の時でも、当社が取り付けたシャンデリアは1つも落ちなかった」(村上大地専務)という信用を築き上げた。

   EL JEWELは2013年、中国の広東省に実質自社工場となるシャンデリア製造工場を設け、あらゆるオーダー、納期に応える体制を構築した。また、2014年10月には麻布本店の近くに欧米の一流品のみを扱うショップ「LUXE」をオープンし、インテリアにも力を注いでいる。わが国初お目見えの一流品が話題を集めそうだ。

岐阜から「看板業界革命」

   一方、岐阜県岐阜市にある文化社は、看板、のぼり旗、ビニール幕などの通信販売で地方のハンディを克服し、全国から月1000件以上の注文が寄せられている。不動産、塾、ラーメン店などの業種・用途別、のぼり旗、駐車場用、スタンドなどの製品別に19店舗をネット上で運営し、取引顧客数を2004年の1万4000社(人)から2014年には6万社(人)に拡大した。インターネットの活用による販路拡大を徹底し、看板業界に革命をもたらした。2006年には岐阜県から「岐阜県IT先進化企業表彰」を受け、FC岐阜(岐阜フットボールクラブ)のオフィシャルスポンサーとなるなど、地域貢献にも力を尽くしている。近藤浩史社長は毎月2~3回は東京に来て、東京におけるネットワーク構築にも精力的に活動している。同社はいま、駐車場などの路面に、簡単に文字や数字を表示できるスプレー吹付用ブリキプレートが大ヒット中。これまで目立ったメディア掲載はないものの、メディアに登場する日は近いだろう。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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