あの「自虐就活アニメ」企業を直撃 創業100年企業のぶっ飛び自社アピール

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   今日のテーマは「タケモトデンキ」です。タケモトデンキの前にまずはアニメから。

   世の中のよくある場面をゆるーいアニメでゆるーく笑おう、というのがPeeping Life(ピーピングライフ)です。

   一連の作品の中で、「残念!就職面接」編があり、就活生の方はTSUTAYAなどで借りて見たことがあるかもしれません(『The Perfect Extension』編に収蔵)。

面接の場面を描くアニメ

「タケモトデンキの会社説明会」編はこんな感じ(YouTubeから)
「タケモトデンキの会社説明会」編はこんな感じ(YouTubeから)

   面接官2人に対して、志望動機などを述べる女子学生。面接官の2人も、質問の仕方などが残念な感じですし、学生も学生で志望理由などがかなり残念な感じ。

   出た当初は学生に見せたり、採用担当者に見せて何がまずいのか議論したり、なんてこともよくやっていました。

   この「面接」編以外の作品も面白く、気になっているアニメでした。

   すると、こんな作品が。

混同されがちなタケモトピアノをあえて出す

   「面接」編もかなりエッジの立った作品でしたが、この「タケモトデンキの会社説明会」編も、なかなかのものです。

   合同説明会でブースがガラガラ、というのもありがちですし、その設定を生かして、採用担当者と学生の会話も、Peeping Lifeらしい、ちぐはぐ感が出ています。

   冒頭から、タケモトデンキを「♪ピアノ売ってちょうだい~」のCMで有名なタケモトピアノと混同するネタを出すあたりがまず秀逸です。

   このタケモトピアノをネタに、「うち、ピアノ弾かないから」。

   以降も、自虐ネタのオンパレード。

   採用担当者「中小企業で100年って、なんで大企業にならないんだってね」

   学生「社長に会ったら、『いつまで中小やっているんだ』と?......」

   などなど、これ、いくらなんでも架空の企業だろう、と思いきや、なんと大阪にある、実在の企業でした。

   これは、社長がどういう思いで作ったのか、あるいは、そもそも社長は何も知らないのか、取材しないと、ということで取材をお願いしました。

取引先企業、「そんなことは絶対にしないほど堅い」

   すると、すぐ取材OKの連絡が来たのですが、ご担当の川咲さんから、

「当日は、私と三宅、佃が対応させていただきます」

   ん?川咲、三宅、佃?

   もう1回、アニメのエンドロールを見てみると......、

「タケモトデンキ 三宅康雄 佃英征 川咲亮司」

   念のため、タケモトデンキの企業サイトの会社概要を見てみると、

「代表取締役社長 三宅康雄」

   社長も、どうもこのアニメに関わっていた模様。

   どんな企業か、リサーチを、というわけで、取引先企業の採用担当者に、事情を話してアニメを見せると、茫然としていました。

「いや、こんなのしないような、歴史ある、堅い企業のはずなんだけど......」

「実はもともと、アニメのファンでした」

   JR・塚本駅を10分ほど歩くと、工場地帯となり、その一角に「タケモト」と書かれた看板が見えてくるので、場所はすぐ分かりました。

   応接室に通されると、しばらくして、三宅社長、佃本部長(人事部長)、それと川咲さん(クリエイティブディレクター)の3人が揃い、さっそく取材開始。まずは、このアニメについて聞いてみました。

三宅「2013年冬に桃屋さんとのコラボアニメを見たのが最初でね。このアニメはおもしろい、これうちでもやってみようか、と。」
佃「私は元々DVDを買うほどのPeepingLifeファンでして。すぐに問合せると、とんとん拍子に話は進みまして、2014年6月には話が決まり、11月から公開を開始しています」
三宅「台本見てもこれは面白いと思いました。いや、銀行や経済団体などの会合に行きますでしょ、すると、結構な頻度でタケモトピアノに間違われるのです」

   なんと、タケモトピアノのネタは社長が大元でした。

   タケモトデンキは、1916年創業の計測機器などを製造するメーカーです。しかし、2012年には福祉機器・ベッドセンサー(要介護者がベッドから離れると介護スタッフに通知がくるセンサー)を開発するなど、従来の機器をずっと作るだけ、というメーカーではありません。

三宅「段々と、『デンキ』が合わないと感じるようになりました。と言って、タケモトだと、同名企業は山ほどあります。そこで、来年の創業100年に合わせて、ハカルプラスに社名を変更することにしました。これなら、同名の企業もないですし、タケモトピアノさんに間違われることもありません」

   社名も斬新な名前に変更となりますが、アニメもそれに合わせて活用を決めたとのこと。

佃「フックを変えることで、これまで集まっていた学生とは感度の違う学生にもリーチしたい、と考えています。創業100年という老舗企業、だけどベンチャースピリットもあるよ、ということをうまく伝えたいと思いました」

   タケモトピアノのネタも強烈ですが、「いつまで中小やっているんだ」など、他のネタも強烈です。

佃「アニメ製作会社さんには、『NGワードはない』『やれるだけやってくれ』と伝えました。うちの方が過激すぎて、先方から『そこまで行くと、アニメの世界観が壊れる』と契約破棄になりそうになりました。何でも、企業コラボでNG無しでやったのはうちが初めてとのことです」

   このアニメはかなり評判を呼び、

川咲「アニメがきっかけで会社訪問に来られた学生もいましたし、合同説明会でも最初からうちのブースに来てくれた学生がいました」

   なお、もともと、合同説明会にはブースを出すことはあっても、閑古鳥が鳴くことはほぼないそうです。

   とはいえ、2015年卒の新入社員は3人。例年、5~10人が目安なのですが、

三宅「10人に内定を出したのに、辞退が相次いでしまいました。数年前までは、インターンシップを実施することでいい学生を採用出来ていたのですが、2014年卒以降、大手企業も含めて実施するようになり、難しくなってしまいました」

   そこで2016年卒の今年から説明会兼選考会として導入を決めたのが、「終わらない計測からの脱出 ナゾトキ体験型説明会」です。

   詳しい内容はさすがに秘密とのことでした。

三宅「弊社は創業100年、だけどベンチャースピリットがある。それに、これからの時代の変化にも対応しなければなりません。変化を楽しめる、そして、頭のいい、愛嬌のある『アホ』。こんな学生に来てほしいです」

   他のポイントは、「失敗を恐れない」「そこそこ気が利く」「考えながら走れる」。

   なるほど。

   説明会は3月28日、4月11日(各2回)、合計4回予定でしたがすぐ満席。4月24日に追加(2回)しましたが、こちらも満席。

川咲「説明会参加者は昨年比8倍です。人手が足りないのでこれ以上の追加日程はさすがに無理です」

   ところで、タケモトピアノさんからは、何か言ってこないのでしょうか。ものすごくネタにしていますが。

佃「いや、もう少ししたら、『探偵!ナイトスクープ』に投稿して、『タケモトデンキ、タケモトピアノに【タケモト】を譲る』というのを放送してもらえないかな、と」

   『探偵!ナイトスクープ』は大阪・朝日放送の関西ローカルの深夜番組(関西以外では時間帯などを変えて放送)の視聴者参加型バラエティ番組で、西田敏行が探偵局長役......とか、説明している場合じゃない。どこまでもノリのいい、そしてしたたかなタケモトデンキでした。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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