アルジェニクス、日本で創薬シーズ発掘を強化 テンセグリティファーマとの協業に見る「IIP」

免疫領域で研究開発を手がけるバイオ医薬品企業アルジェニクスは10月6日、都内でプレスセミナーを開催し、同社が進める「免疫学イノベーションプログラム(Immunology Innovation Program:IIP)」の概要と日本での取り組みについて説明した。

会場では、国内スタートアップのテンセグリティファーマとの共同研究開発についても紹介された。完成度の高い候補物質を探すだけではなく、初期段階の研究シーズから研究者と対話し、グローバルでの医薬品開発につなげようというのがIIPの考え方だ。

日本の基礎研究をどう創薬につなげるか

アルジェニクスジャパン代表取締役社長の後藤太郎氏は、日本の創薬環境について説明した。

日本の免疫学分野からは、利根川進氏、本庶佑氏、坂口志文氏という3人のノーベル生理学・医学賞受賞者が出ている。後藤氏はこうした実績に触れ、「日本に素晴らしいサイエンスが存在することは自明である」と話す。

一方、基礎研究の成果を新薬の開発につなげる仕組みについては、なお課題があるとの認識も示した。

米国では有望な研究シーズに専門家や投資が集まり、製品化に向けた開発が進むケースが多い。後藤氏は、米国で一般的な事業開発(BD)の評価軸をそのまま日本に当てはめるだけでは、国内にある研究シーズを十分に評価できない可能性があると指摘した。

初期の研究段階から対話する「IIP」

こうした中でアルジェニクスが進めているのがIIPだ。

同社でコーポレート・ディベロップメント&ストラテジーを担当する明田直彦氏によると、一般的なライセンスインとは異なり、研究の初期段階から外部の研究者と対話を重ねることが特徴だという。

アカデミアやベンチャーが持つ疾患や標的に関する知見と、アルジェニクスが持つ抗体エンジニアリング技術を組み合わせ、共同で医薬品候補の可能性を探っていく。

質疑応答で明田氏は、提携対象となる研究の段階について「厳格な基準は設けていない」と説明した。

非臨床試験のデータがそろっていれば議論は進めやすいものの、動物試験用の抗体がまだないような初期の基礎研究でも、作用機序に新規性があり「化ける可能性」があると判断すれば、早い段階から対話するという。

同社は日本を創薬シーズ探索の重要な拠点の一つと位置づけ、国内での活動を強化している。

がん悪液質から自己免疫疾患へ TSP-101で協業

セミナーでは、日本企業との協業例として、テンセグリティファーマとのTSP-101をめぐる取り組みも紹介された。

同社代表取締役社長の中原崇人氏によると、抗Fn14抗体「TSP-101」は当初、がん悪液質を対象として開発が進められていた。

自己免疫疾患を中心に研究開発するアルジェニクスとは一見すると領域が異なる。しかし、アルジェニクスの研究者がFn14という分子の生物学的なメカニズムに注目し、両社の対話が続いたという。

中原氏は当時について、「答えを急ぐのではなく、問いを広げていく対話だった」と振り返った。

その後、がん悪液質だけでなく、炎症性・免疫性疾患への応用可能性についても検討が進み、2026年1月には共同研究開発およびオプション契約を締結した。

中原氏は、大企業とスタートアップという関係でありながら、意思決定がフラットで、情報を共有しながら議論できたことも開発を進める上で重要だったと話した。

TSP-101については、現在、First-in-HumanのPhase 1試験が進められている。

「Science First」で研究シーズを探す

後藤氏は、同社の製品「ウィフガート」の研究開発につながった経緯についても紹介した。

自社だけで生み出した研究テーマではなく、学会会場のエレベーターで研究者と交わした科学に関する会話が一つのきっかけになったという。

後藤氏は、事業性だけでなく科学的な面白さを起点に研究者との対話を続ける「Science First(科学第一)」の姿勢は、アルジェニクスの設立当初から続く考え方だと説明した。

日本では世界的に評価される基礎研究が生まれる一方、それを医薬品として実用化するまでの橋渡しは長く課題とされてきた。完成した候補を待つのではなく、初期の研究段階から企業側が研究者と関わるIIPが、日本発の創薬シーズをどこまで開発につなげられるかが今後の焦点となる。

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