日本最大の企業といえば、まずはトヨタか。世界の自動車メーカーで初めて年産1000万台(2013年グループの総数)を超えた。そこに最強のライバルが現れたという設定の『トヨタ対VW 』(中西孝樹著、日本経済新聞出版社)が、いま両社の不思議な住み分け状態と競争激化のシナリオを描いている。ビジネスの一分野とはいっても国家や社会制度から技術観、さらに「人と組織」の関係までが色濃く反映する基幹産業。ともに、それぞれが課題を抱えてもいる。【2014年2月2日(日)の各紙からⅠ】
技術、経営、売れ筋のコントラストと不思議な住み分け
まず面白いのは、「こんなに」というほどのコントラストがいくつかあることだ。
トヨタが売れているのは、日本・北米・東南アジア。独フォルクスワーゲン(VW)はヨーロッパ・中国・南米。中国については尖閣問題や反日感情という特異要素があるので別扱いも必要だろうが、それにしても、住み分け状態は世界市場だけではない。技術面では、トヨタがハイブリッドで省エネに、VWが小排気量の過給直噴ターボエンジンで小型化にと、力の入れ方がくっきり。
もっと違うのは経営手法だ。トヨタが「人づくり・ものづくり」を看板にしてきたのに対して、VWは買収戦略で急成長。その行きつく先が「8兆円投資で1000万台超をめざす」というから、両社の住み分けはどうやら間もなく終わる。世界各地で決戦必至だ。