2024年 4月 27日 (土)

野坂昭如「無頼を気取った育ちのいい紳士」シャイな自分隠すための酒とサングラス

人気店や企業から非公開の招待状をもらおう!レポハピ会員登録

   野坂昭如さんとはほとんどお付き合いはなかったが、講談社にはよく来ていて、エレベーターで一緒になった。トレードマークのサングラスがとても格好良かった。私も真似て黒のメタルフレームのサングラスをかけていたことがある。あるとき、野坂さんが私のそれを見て何やらいいたそうにしていたが、そのまま別れた。その後、某パーティで会ったら、私と同じメタルフレームに変えていた。

   野坂さんに原稿を頼み、神楽坂の和可菜にもらいに行ったことがある。このときは無愛想な野坂さんで、原稿の入った封筒を放り投げるように渡したきり、背を向けてしまった。Barやゴールデン街などで会う酔っ払い野坂さんは、呂律が回らず何をいっているのかよくわからないが、誰彼かまわず話しかけてきた。

   基本的にシャイで繊細な人であったと思う。『週刊新潮』で元タカラジェンヌで奥さんの野坂暘子さん(74)がこう話している。<「お酒といえば、サングラスと同じく、『シャイな自分を隠すため』なんて世間で言われていた通り、野坂にとっては気付け薬のようなものでした。(中略)それでも家庭では、本当に丁寧な人でした。私は、名前を呼び捨てにされたり『おい』なんて言われたことは一度もなく、結婚当初からずっと『あなた』と呼ばれていました。元来育ちは良い人で、食事のマナーも実にスマート。養子に行った先の神戸のお宅でも、相当に厳しく躾けられたのだと思います」

   「エロ事師たち」で作家デビューし、作詞した「おもちゃのチャチャチャ」で日本レコード大賞童謡賞を受賞。67年に「火垂るの墓」などで直木賞を受賞し、74年には氏が編集長をしていた雑誌に掲載した「四畳半襖の下張り」がわいせつ文書販売容疑で摘発されると、敢然と法廷闘争を挑む。小沢昭一、永六輔と「中年御三家」を結成して武道館でライブを行い、田中角栄の金権政治を批判して旧新潟3区から出馬するなど、常に時代を挑発し続けた人だった。

   だが、03年5月に心筋梗塞で倒れてから、夫人との二人三脚が始まった。暘子さんによれば、発症してからあれだけ好きだった酒とタバコをキッパリ止めたという。右手が動かなくなり夫人に口述筆記をしてもらっていた。議論好きが喋ることも叶わなくなってしまった。

   <「それなのに野坂は、ついに死ぬまで、ひと言も文句や不平不満を口に出しませんでした。どれだけ苦しかっただろうと思います」(暘子さん)>

   焼け跡闇市派と称していた野坂氏は、最後まで<「『戦争について語るために僕は生きているんだ。日本が目の前で崩れていくのが見えるようだ。もっともっと戦争の恐ろしさを伝えていかなくてはいけない』」(暘子さん=週刊文春より)>といっていたという。享年85。

安倍首相の腹積もりは消費税10%再延期!来夏の衆参ダブル選挙に大勝して一気に改憲

   2017年に消費税を10%に引き上げる際、軽減税率を導入することが決まったが、その対象をどこまでにするのかで自民・公明の協議が進まず、結局は公明党に押し切られた形で、生鮮食品と加工食品まで含めることで一応決着した。

   週刊新潮は1兆円まで膨らんだ財源をどうするのかの当てもなく大風呂敷を広げたのは、来年の参議院選挙で公明党の協力がなければ選挙を戦えないと考えている菅官房長官が、反対派を恫喝して押し切ったと報じている。つまり、「6000億円の税金を使って、官邸が公明党からの選挙協力を買ったと見られても仕方がない」(法政大学経済学部小黒一正教授)>のである。

   形振り構わない菅と安倍首相のやり方だが、新聞メディアの追及は形だけである。なぜなら、読売新聞の渡辺恒雄氏を先頭に「新聞に軽減税率を」という政界工作が実り、晴れて適用されることになったからだ。適用されるかどうか定かでない出版界からは、当然ながら不満の声が吹き出しているが、知らん顔である。

   だが、消費増税は安定した社会保障を続けるために合意されたので、このような政争の具に使うためではない。しかも、1兆円の財源を確保するためには、低所得者の医療や介護の負担を減らして、そっちへ回すことになるのは間違いないはずである。

   ここへきて官邸が軽減税率で大幅譲歩をしているのは、安倍首相は10%引き上げをやる気はなく、来春に「増税は凍結する」と発表して、その勢いで参院選と衆院選のダブル選挙に持ち込み、大勝しようという腹づもりだという見方が週刊誌では多くなってきている。

   『週刊現代』はダブル選挙が行われれば、自民党は単独で衆議院323、参議院127という史上最大規模の議席数を獲得すると予測している。これに公明党、おおさか維新といった与党・準与党勢力を合わせると、安倍自民党を中心として衆議院で400議席を超える空前の独裁勢力が誕生する。

   そうなれば、総裁就任後、4回の選挙ですべて圧勝ということになる。もはや安倍総理を辞めさせる必然性もなくなり、東京五輪後の21年まで安倍政権を維持しようという意見が盛んになるとしている。

   だが、週刊現代が調べてみると、安倍政権を積極的に支持している人は、自民党に票を入れている人の中にもほとんどいないというのである。これに比べて、野党支持者には「憲法を無視する与党を許すことはできない」「沖縄で起きていることを何とかしてほしい」といった具体的な意見が多かったそうだ。

   週刊誌が今やるべきことは、安倍自民党が大勝するといった「当たり前」の報道ではなく、それを前提にして、どうしたら自民党大勝を阻止できるのか、野党はどう共闘すればいいのか、野党の党首を誰にすれば安倍に対抗できるのかを提言することではないのか。

   国民の多くが熱狂した小泉純一郎元総理が残したのは非正規労働者を増大させた超格差社会だった。安倍総理が辞めた後に残すものは、憲法改悪と軍事大国化、それに年金制度を含む社会保障制度の完全崩壊だとしたら、その時、臍を噛み血の涙を流すのは国民である。そのことを片時も忘れてはいけない。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中