2024年 5月 4日 (土)

TBS・楽天の勝敗 スティールの「判例」が影響

「判例」が「高裁決定」なら、両社経営陣の「意図」も問題に

   TBSの買収防衛策もブルドックと同じように、全株主に新株予約権を無償で割り当て、その新株予約権と引き換えに、TBSの企業価値を損なう「乱用的買収者」には現金などの対価を、それ以外の株主には新株を渡すというものだ。ただし、TBSの防衛策の承認と発動はブルドックと違って、ともに株主総会で過半数の賛成が必要な普通決議で決める仕組みだ。TBSは安定株主の確保に成功し、6月末の定時株主総会で出席議決権の77.1%の賛成で防衛策導入が承認された。

   TBSは楽天に対する防衛策発動の是非を判断する企業価値評価特別委員会の結論を踏まえ、株主総会で防衛策発動の承認を求めることになる。防衛策の導入承認の時と同様に、出席議決権の3分の2を超える圧倒的多数の賛成で発動が決められる可能性が高い。

   TBSが防衛策発動を決めて、楽天が差し止めを求めた場合、スティール対ブルドックの地裁・高裁の両決定に沿って判断するとどうなるか。

   地裁決定では、「会社経営に関する判断は、基本的に株主総会に委ねられる」としており、TBSが株主総会で特別決議並みの賛成で承認を得られれば、一応、有利な立場にたてる。そのうえで裁判所は、防衛策発動に伴って楽天に支払われる現金などの対価が、楽天の経済的利益を損なわない適正なものであるかどうかを検討して、発動の是非を判断するとみられる。ブルドック裁判での地裁の判断に則れば、必ずしも、楽天が「乱用的買収者」であるかどうかを認定する必要はない。

   これに対して高裁決定に従うなら、裁判所が楽天やTBS経営陣の「真の意図」にまで踏み込んだ判断を行い、楽天がTBSの企業価値を損なう「乱用的買収者」に当たるかどうかの判断をすることになる。

   楽天によるTBS株取得の経緯、その最終的な目的、楽天のTBS株買い増しによるメリットとデメリット、TBS経営陣の保身の有無などについて、踏み込んだ判断を示す可能性がある。その場合、裁判所の結論次第では、楽天かTBS経営陣のどちらかに、ビジネス社会での評判が傷つくリスク(レピュテーションリスク)がありそうだ。

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