2024年 4月 27日 (土)

新技術発展の足引っ張る 日本の著作権法これでいいのか
牧野二郎弁護士に聞く

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著作権法が足を引っ張り、情報産業でも「空白の10年」

―日本の著作権法では、「キャッシュをコピーすること」だけじゃなくて、検索するために必要な「インデックス」(索引)を作ることも、著作者の許諾がないと駄目だということなんですね?

牧野 そうなんです。そもそもデータベースを作れない。「そんなの無視して作っちゃえばいいじゃないか。やれば(競争に)勝つじゃん」という考え方もあるとは思うのですが、誰かが訴訟を起こせば、確実に負けてしまう。訴訟リスクが高い上に、著作権法違反は、すぐに警察が動きます。

   「たまごっち」の偽物が登場した時は、全国各地に捜索が入りましたし、JTBが他人の写真を2枚使ったら、それで全国のJTBに捜査が入りました。著作権を守るために、国家権力が最大動員されるんですよ。
そういうことが起こる日本という国で、検索エンジンの違法行為がはっきりして、誰かに「刺された」場合、すぐ警察が動いて、検索エンジンは潰れてしまいます。みんなのためにサービスをやろうと思った人が、刑事事件で前科者になってしまう。 「違法行為でもやるべきだった」とうそぶく人には、検索エンジンの開発者が何に悩んで、なぜやらなかったかを良く考えて欲しい。

   僕ら弁護士だって、相談されたら「やめろ」って言いますから。それが、遵法国家な訳ですよ。新しい技術の発展は応援したいけれども、どうしても手が出ない、足が出ない。
   それに対して海外は、どんどんコピーを取り入れられるようにして、どんどんデータベースを作っている。日本の検索エンジンは穴だらけなのに対して、海外の検索エンジンは、コンマ何秒で大量に結果が出てくる。その結果、97年から2000年の間に、日本のほとんどの検索エンジンは淘汰されて、廃業していきました。そういう意味では、著作権法が足を引っ張り、日本の風土が足を引っ張り、検索・データベース産業が成熟してこなかった。「空白の10年」という言葉がありますが、情報産業でも「空白の10年」だったと思います。データを使うということが、産業として育成されてこなかった。それが日本の限界だったと思います。

―ひるがえって、周辺諸国を見ると、「baidu」(中国)や「naver」(韓国)など、「国産検索エンジン」が幅広く利用されているようです。日本とは、著作権法の扱いが違うようですね。

牧野 韓国・中国の著作権法を見ると、内容は日本とそっくりで、日本の著作権法を参考にしたことがわかります。韓国に至っては、法律の構成までそっくりです。ただし、韓国は「引用」という概念を幅広く使って、判例を積み重ねて、06年の大審院判例で、実質(一定の条件で著作物の利用を認める)フェアー・ユースが認められる形になった。中国は、著作権法を変えずに「通達」という形で「コピーはOK」ということにした。こちらも、事実上フェアー・ユースが認められるようになった。米・中・韓ではフェアー・ユースが認められたのに、日本だけが孤立した形です。

―日本でも、「マーズ・フラッグ」のような、「国産検索エンジン」が登場していますね。

牧野 やはり、法律のしばりで、本格的に展開するのは難しいと思いますね。画像解析・画像検索はだいぶ出てきていますし、いい産業に育ちつつあるようですけれども、やっぱり自由闊達に出来ていない。未だに著作権法を気にしながら、のんびりとやらざるを得ない。まだまだ、法律が足かせになっているのはないでしょうか。
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