2024年 5月 5日 (日)

「プリウス」リコール対応 「かき入れ時」と重なり販売店悲鳴

来店不要なのでコロナ禍でも安心!顧客満足度1位のサービスとは?

   トヨタ自動車の系列ディーラーによる「プリウス」などハイブリッド車4車種のリコール(回収・無償修理)対応が2010年2月10日に始まった。対象車種は4車種合計で22万3000台。リコール制度では3カ月で90%以上の処置を終えることが求められているが、前日の9日にトヨタ東京本社で記者会見を開いた豊田章男社長は「それ以上のスピードでやりたい」と、トヨタ陣営が迅速な対応を目指していることを強調した。

   一方で系列ディーラーのサービス工場は、1年間のうちで車検・点検入庫の作業台数が最も多くなる年度末を迎えている。リコール対応による仕事量の上乗せは、各ディーラーにとって大きな試練となっている。

年度末迎えサービス工場はフル稼働の状態

   今回のリコール対象車種は、同じブレーキシステムを採用しているトヨタブランドの「プリウス」(約20万台)、「SAI」(約1万1000台)、「プリウスPHV」(約150台)と、レクサスブランドの「HS250h」(約1万2000台)。保安基準の適合範囲内の状態でリコールを行うことは珍しいが、この4車種のリコール対応に国内約5000店の系列ディーラー店舗が一斉に取り組み始めた。

   系列ディーラーが目指しているのは「3カ月で90%以上というような悠長なことは言っていられない。2月中に対象車のほとんどの修理を完了する」(首都圏の系列ディーラー経営者)ことだ。リコール制度で定めた期間と4月下旬からのゴールデンウィークでの店舗の休業を考えれば、90%の台数の作業をゴールデンウイーク前までに終えれば済む。だが、のんびりと作業をこなしていては、トヨタの信頼に傷が付くだけでなく、ディーラーに対する評価にも大きな影響がでることになる。

   ディーラーにとって3月は、年度末の大事な販売商戦時期にあたる。当然、販売台数が増える時期であるからこそ、保有台数の中でサービス工場に入庫する車検・点検の台数も多くなる。エコカーの減税や補助金があることで車検時期を迎えた車を新車の買い替えるユーザー数は昨年より多いとされているが、これまでの保有台数をベースに単純計算すると、3月には最大130万台のトヨタ車が車検を迎えることになる。サービス工場はフル稼働の状態が続き、仮にリコール対象車の入庫が3月に集中すると、一部のサービス工場では受け入れ能力を超えることも想定されるという。店舗が整備作業待ちの車で溢れ、新車を購入しようと店舗を訪れるユーザーへの対応に影響する可能性もある。

「2月はトヨタと我々の将来を決める大事な月になった」

   サービス工場におけるリコール対応の修理作業は、ABSを制御するコンピュータプログラムを書き換えるだけで、5~10分で終わる。だがトヨタの品質が問われていることもあり、他の不具合が生じているかどうかチェックすることも加えることで1台あたり40分の作業時間になるという。この時間はトヨタがディーラー店舗で展開してきた短時間車検と同程度の時間が掛かることを意味している。

   リコール対応によって車検1台分の作業時間が必要な車の入庫が新たに発生することで、ディーラーのサービス部門は入庫台数の予測を大きく上方修正しなければならなくなった。しかもプリウスなどのハイブリッド車のユーザーは、様々なメーカーの車から乗り換えたユーザーが数多く存在する。「トヨタだから心配はしていない」とするユーザーの声がディーラーに多く寄せられているようだが、ディーラーのサービス工場が忙しいからと機械的に受け入れて作業を進めていると大きな問題が生じることもある。

   他メーカーからトヨタやレクサスに乗り換えたユーザーの中には、ディーラーの対応に不満を抱く者が現れることも予測される。このため国内トヨタ陣営は、3月にリコール対応が集中することだけは避けなければならないと考えた。ディーラーにとっては、リコール対応分の整備代金をトヨタが支払うことで一時的に売り上げが上がるが、その対応での接客応対を一歩間違えば整備作業依頼や新車代替などの需要を生み出す顧客を失うことにもなりかねない。

   国土交通省にリコールを届け出た9日に行われた記者会見で豊田社長は「販売店と協力して信頼回復に努める」と語り、ディーラーはリコール対象車のユーザーに対して、リコールの届出が行われる前から全ユーザーへの連絡を取るなどの対応に万全を期してきた。迅速なユーザーへの対応は商売の基本であり、収益源を守るために不可欠だ。

   だが2月中にほとんどのリコール対象車の修理を終えなければ、系列ディーラーが販売の追い込みをかける3月の新車販売台数をも左右することになる。系列ディーラーの経営者の一人は「3月は今年度の経営実績を決める大事な1カ月。だが2月はトヨタと我々の将来を決める大事な月になった」と、大きな危機感を抱きながらリコール対応に当たっていることを明かした。

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