イルカ漁で有名な和歌山県太地町の港で、「環境保護団体」を名乗る海外の組織が「イルカのいけすの網を切断した」と「犯行声明」を出した。「ザ・ブラックフィッシュ」と名乗るこの団体、メンバーは以前「シー・シェパード」でも活動していたという。日本の漁業関係者にとって、新たな「頭痛のタネ」になるかもしれない。ツイッターやフェースブックを駆使ウェブサイト上で堂々と「犯行声明」「ザ・ブラックフィッシュ」は欧州を基盤とし、魚をはじめ鯨やイルカ、サメといった海洋生物の保護をうたう。ウェブサイト上には、太地町のイルカのいけすの大きな写真とともに、2010年9月28日付けで「イルカを救うため太地町で(いけすの)網を切断」と題した声明を掲載している。それによると、メンバーが夜間ひそかに海中に潜って、6か所のいけすの網を切ったという。声明では「追い込み漁で捕獲されたイルカのうち、海外のイルカ水族館へ売られるものが選ばれていけすに入れられていた」とし、「海へ逃がすため」行動に移ったという。しかし複数の報道によると、逃げ出したイルカはいなかったようだ。太地町のイルカ漁は、2010年の米アカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画「ザ・コーブ」で批判的に描かれた。国際社会でも注目を浴びたせいか、ブラックフィッシュが英文で開設するSNSサイト「フェースブック」には、今回の太地町での活動に対して、「君たちはヒーローだ、ありがとう」「次回は厳しく見られていると思うから気をつけて」「イルカは賢いから、数頭は逃げたんじゃないかな」と、全面的に賛同する書き込みが次々に寄せられている。ツイッターでも積極的に情報を発信。「オランダ紙で、ブラックフィッシュの記事が大きく掲載された」「太地町での我々の行動に、信じられないほど多くの応援が寄せられた」などと「宣伝活動」に余念がない。シー・シェパード「聞いたこともない団体」団体としては、まだ生まれて間もないようだ。ウェブサイトに載せられている「設立声明」の日付は2010年8月11日、場所はオランダ・アムステルダムとなっており、創設者または主要メンバーと思われる3人の男女の写真が見られる。メンバーは、日本の調査捕鯨船にたびたび妨害行為を仕掛けた反捕鯨団体「シー・シェパード」の船にも乗り込んでいた経験があるという。各環境保護団体の活動を支持しながらも「絶望的な現状を打開するには、もっと何かできるのではないか」と考えて新団体結成に踏み切ったようだ。「熱い思い」を隠さないブラックフィッシュだが、知名度はほとんどゼロといえるだろう。太地町の「網切断」については、シー・シェパードも関心を持っていたようで、ウェブサイト上でコメントを発表しているが、「太地町の件が発生するまで、我々はこの団体について聞いたこともなかった」と突き放した。だが、気になるフレーズもある。実はシー・シェパードも太地町に活動家を送り込んでいるのだが、「不法行為は一切行わず、観察と報告が目的」としている一方で、イルカ漁について「反対する団体すべてを支援する」と明言した。今後、両団体が手を握って大規模な「反イルカ漁運動」に乗り出さないとも限らない。
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