2024年 5月 2日 (木)

来年4月新発足の原子力安全庁 なれ合い排除と「独立確保」、できるか

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   政府が2011年8月15日、原子力規制行政の独立・強化のための「組織改革基本方針」を 閣議決定した。経済産業省の原子力安全・保安院と内閣府の原子力安全委員会、文部科学省の放射線モニタリング司令塔機能を統合した「原子力安全庁(仮称)」を環境省の外局として設置するのが柱だ。

   だが、菅直人内閣の退陣が決まっている中での駆け込み決定で、「規制の在り方の根本に立ち返った議論が足りない」(民主党議員)のは明らか。野党の出方も読めず、大連立になるかなど次期政権の枠組みともからみ、菅内閣のもくろみ通り「2012年4月発足」となる保証はない。

一定の役職以上の幹部職員は元の省庁に戻さない

   政府は8月中にも準備室を設置し、関連法案を年明けの通常国会に提出。来年4月の発足を目指す。さらに、その後は「第2段階」として、年末までに組織強化策を検討。新たに制定するエネルギー基本計画や事故調査・検証委員会の報告などを踏まえ、組 織を改編する――という。

   安全庁の設置の最大の狙いは、は原子力の「規制と利用」の分離。原発を推進してきた経済産業省(資源・エネルギー庁)から、規 制を担当する保安院を切り離すということだ。具体的には「事故発生時の初動対応その他の危機管理」を重要な役割と位置づけ、危機管理対応 の専門官を新に置くほか、環境相の助言・諮問機関として「原子力安全審議会(仮称)」も設け、原子力規制行政の中立性を保つ方針だ。

   人事の独立性にもポイントで、安全庁長官は官僚出身者だけでなく、民間有識者も含め幅広く人選。経産省内でエネルギー庁と保安院との間で人事異動が行われ、「なれ合い」と批判されたことから、安全庁では、他府省から来た一定の役職以上の幹部職員を元の省庁に戻さない「ノーリターンルール」を徹底させる。

専門の人材養成が大きな課題

   環境省外局としたのは、ドイツを参考にしたから。チェルノブイリ原発事故を受け、86年に「連邦環境・自然保護・原子力安全省」を設置した。枝野幸男官房長官らは内閣府に置く案を主張したが、菅首相-細野豪志原発事故担当相ラインが環境省外局で押し切ったといい、環境省の地方環境事務所を活用できるのに加え、「内閣府には経産省出向者がゴロゴロいて、影響力排除は困難だ」という首相らの根強い経産省不信からだという。

   だが、環境省外局でも問題はある。同省は地球温暖化防止の立場から原発推進の旗を振ってきた経緯があり、「原発に中立の立場ではなかった」(同省幹部)。国際原子力機関(IAEA)が日本に求める「いかなる政府部門からも独立」した組織、という観点から、米国型の独立性のきわめて強い「原子力規制委員会」(NRC)のような組織を目指すべきだとの声は各方面に根強い。

   何より、「どんな組織にしても、人材がいなければ機能しない」(経産省OB)。現在、保安院の原発関係職員は約330人、安全委事務局が約100人で、その他を合わせ、原子力庁は500人規模で発足する見込みだが、現在職員1250人の環境省には原子力の専門職員はおらず、環境省としての組織運営は「難しくなる」(経済官庁幹部)。そもそも、500人規模でも、約3000~4000人を擁する米NRCに遠く及ばない。

   より問題なのが「原子力村」といわれる官民学にまたがる「閉鎖的社会」。高速増殖炉「もんじゅ」の事故の際、「東大などで原子力を学び、一番優秀な人は『もんじゅ』を進める組織や民間の原子力関連メーカーに行くので、科学技術庁(当時、現文科省)の職員は強いことが言えない」などと揶揄された。今回の原発事故でも、「現場がわかっているのは電力会社や原発メーカー社員で、保安院や安全委が問題点 などをつかみ、対応を指示するなどは不可能なことがはっきりした」(政府筋)とも言われる。民間との人材交流の在り方を含め、専門の人材養成も大きな課題になる。

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