2024年 5月 5日 (日)

「自動車業界2013」BNPパリバ証券・杉本浩一氏に聞く(上)
北米と東南アジアでどれだけ稼げるか! 円相場「85円」がポイント

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トヨタはタイで儲けている!


―― 中国問題はどのようにみていますか。

杉本 たとえば日産自動車が中国市場で販売する車両のエンブレムを、ルノーに換えて売ろうか、などという話が実しやかにいわれていましたし、反日デモ以降の中国市場は10月に、トヨタの販売が44%減、ホンダが54%減、日産が41%減と散々でした。
   一方で、欧米や韓国、中国のクルマが販売を伸ばしたことも、事実ありました。なかでもトヨタ車は日本の製造業の「顔」であり、目の敵にされたところがありましたが、それでもやはり品質のよさとブランド力で、日本車にかなわないことがわかってきました。
   中国の消費者は(政治と経済を)しっかり分けて考えています。販売はかなり回復しつつあり、最悪期は脱しました。2013年は、12年ほどの日本車離れはないと思います。

―― とはいえ、国内市場がしぼむなか、メーカーは海外市場に活路を見いだすしかありません。

杉本 そこです。ポイントは東南アジアにあります。たとえば、意外に思われるかもしれませんが、いまトヨタが世界市場で収益を押し上げているのはタイなどで売れているピックアップトラック(大型以外のトラック)です。
   タイはピックアップトラックの生産国であり、輸出国で、トヨタはそこで高いシェアをもっています。これが同社の収益改善に大いに役立ち、いまや利益の柱になっています。
   明るさが戻ってきた北米市場とともに、引き続き東南アジアが成長のカギを握っていることは間違いありません。

―― 自動車業界の2013年のキーワードはなんでしょう。

杉本 まずは「円安」です。円安が進行すれば、採算性が大きく改善しますし、どの車種も黒字に転換できます。万一の災害や多少のトラブルが起こっても、そのリスクをカバーすることができる。それだけ、円安への期待は大きいのです。
   ただ、わたしが最も注目しているのは「キャッシュフローの配分」です。2013年は円安による利益拡大などが見込めるなか、先々を見通し、手元資金をどう使っていくのかが問われてきます。設備投資に充てるのか、マーケティングや販売促進費用を増やすのか、自社株買いや配当の引き上げなど株主への利益配分も重要です。そして雇用への投資です。こうした経営判断にあたり、将来を見通す力が試される1年になるのだと思います。
   おそらく、13年後半には大きな転換点を迎えるのではないでしょうか。

杉本 浩一(シニアアナリスト)

すぎもと・こういち 京都大学を卒業後、1994年に野村総合研究所に入社。自動車部品、米国自動車、自動車各セクターを野村證券金融経済研究所、米国野村證券などで担当する。その後2006年にメリルリンチ日本証券の自動車担当のディレクター・シニアアナリストとして勤務。2011年5月にBNPパリバ証券入社。自動車アナリストの経験は通算17年を超える。

投資情報のInstitutional Investors誌ランキングでは、自動車部品部門で1999年と2000年に1位。自動車部門2011年4位。


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