2024年 5月 4日 (土)

特集「尖閣最前線・石垣島はいま」最終回
住民の共通認識は「尖閣は石垣のもの」 対中感情は「静かな怒り」「複雑」「不安」

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   J-CASTニュース記者が取材した複数の石垣島住民が、尖閣諸島国有化後の中国の反日活動に危機感を抱いている印象が薄かった点は、本連載の第2回で触れた。だが同時に、誰もが「尖閣は石垣のもの」という意識が強いことも分かった。

   子どもの頃から身近に感じていた島の領有を主張し、破壊行為を繰り返す中国の様子を、報道を通して目の当たりにした石垣の人々。誰もが語り口は穏やかだったが、中国に対する思いは簡単には言い尽くせない様子だった。

「ああ、自分は『尖閣の近く』に住んでいるんだな」

石垣港に停泊していた海保の巡視船
石垣港に停泊していた海保の巡視船

   石垣港離島ターミナルで、竹富島に向かうフェリーに乗船した。動き出して間もなく、港に停泊する海上保安庁の巡視船が視界に入ってきた。その数、3隻。尖閣国有化から3か月以上が過ぎた2012年12月下旬でも、尖閣近海には中国の海洋監視船が連日、接続水域を航行していた。停泊中の3隻は尖閣での「任務」のために待機していたのだろうか。

   「石垣生まれ、石垣育ち」の住民のなかには子どものころ、学校の授業以外でも何らかの形で尖閣について聞かされてきた人が多かった。登野城小学校・宮良永秀校長のように、戦時中に海難事故に遭遇して魚釣島に漂着した人の遺族から話を聞いた、という人もいる。かつて日本人が住んでいて、カツオブシ工場があったことを小さい頃から知っていた人も少なくない。当然のように「尖閣は石垣の一部」と頭にすり込まれた。そこにいきなり中国が「自国の領土だ」と強烈に主張し、日本に敵意をむき出しにしてきた。

   宮良校長は「ただただ驚くばかりでした」と戸惑いを隠さない。一方、ペンション「海の家族」オーナーの新盛裕二郎さんは、知人の漁業関係者が「尖閣付近では安心して操業できない。近寄れない」と困っていた様子を話した。尖閣問題に関しては「中国はワガママ。日本政府はきちんと対処してほしい」と求めるが、ペンションの経営者としては「中国人客が増えてほしいとの思いもあり、複雑です」と吐露する。

   仕事の関係で4年前に大阪から石垣島に移り住んだ井庭康典さんの場合は、石垣出身者とは少し違った感じ方だ。テレビのニュースで、全国版に続いて地方版でも中国の反日デモが報じられると、「ああ、自分は『尖閣の近く』に住んでいるんだな」と実感したという。職場では、年配の人が中国の反日の様子を見て「なぜこんなことになってしまったのか」と嘆く姿を目にした。

中国機に対するスクランブルは過去10年で最多

   仕事を含め、日常生活の中で尖閣にかかわることはない。それでも「大阪に住む両親が『大丈夫か』と電話をかけてきたことはあります」と井庭さん。個人的には中国に友人がおり、日中関係のこれ以上の悪化は望んでいない。2012年12月13日、中国機が日本の領空を侵犯したことは「少し心配です」と口にする一方、「中国が石垣を攻撃する、なんて現実的にはありえないでしょう」とも考える。

   だがこの領空侵犯を「意外と重大な問題」とみる向きもある。地元の識者に話を聞くと、自衛隊機による緊急発進(スクランブル)が増えている、というのだ。2012年12月18日付読売新聞によると、2011年度の航空自衛隊による中国機に対するスクランブルは156回に上り、過去10年間で最多だった。2012年度はさらに増えているのだろうか。「海の場合は海上保安庁が対応するが、空は空自。『一触即発』になりかねず、決してよい状況だとは言えません」と繰り返した。

   この識者も石垣生まれだ。中国の反日的な動きについては「表には出さないが、石垣の人たちは『それは違うんじゃないか』と反発しているのではないでしょうか」と語る。

   歴史的に深い付き合いのある台湾と比べて、中国との親交は浅い。言わば「未知の国」が自分たちに牙をむき出しにした尖閣問題。石垣島の人たちは不安や恐れと同時に怒り、加えて「これ以上の対立は望まない」「平和的に解決してほしい」との政府への願いと、さまざまな感情が入り混じっているようだ。

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