2024年 4月 28日 (日)

国債発行抑制のカラクリ あの手この手の「マジック駆使」

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   安倍晋三内閣発足後、初の予算となる2013年度当初予算案が決まった。金融緩和、財政出動、成長戦略を3本の矢とする「アベノミクス」は、総選挙中に安倍氏が建設国債の日銀引き受けに言及(その後「市場を通じて」と釈明)したこともあり、財政規律の緩みが懸念されたが、公共事業や防衛費を増やす一方、民主党政権で常態だった借金(新規国債発行額)が税収を上回る異常事態を回避した。

   「引き締まった予算」(麻生太郎財務相)の演出に成功した形だが、内実はあの手この手の「マジックを駆使」(市場関係者)したとの評が多い。

消費税率引き上げのため「少々の無理は飲む」

   当初予算案は一般会計総額92兆6115億円と、前年度当初予算(実質92兆9181億円)を下回り、7年ぶりに減額。歳入では税収を43兆960億円、新規国債発行額(新たな借金)を42兆8510億円とし、4年ぶりに逆転を解消した。その「号砲」は麻生太郎副総理・財務相の1月25日の閣議後会見。「新規国債発行については、税収を上回る形での予算編成は避けたい」と語った。実はこれより前の1月中旬、財務省幹部は麻生氏に、「国債発行が税収を上回るのでは、国際会議で笑われます」と進言していた。首相経験者の副総理として国際的評価を気にする麻生氏のプライドをくすぐるささやきだった。首相官邸も日銀引き受け論議もあってバラマキ批判を懸念していた。

   財務省にとっては、2014年4月の消費税率引き上げ(5%を8%に)という至上命令があるため、今回の経済対策と予算編成は「少々の無理は飲む」(幹部)というのが基本スタンスだった。とはいえ、緊急経済対策に伴う2012年度補正予算案で10兆円超という国費投入を強いられたことから、2013年度編成では財政規律維持をアピールしたかった。こうして、麻生氏のイニシアチブの形で「税収と国債発行の逆転」という新年度編成の最大の課題をなんとかクリアした。

苦肉の策としてひねり出したのが「経済対策予備費」の廃止

   とはいえ、中身をみると綱渡りだ。まず、税収。2%のインフレ目標を打ち出し、政府経済見通しで名目成長が16年ぶりに実質を上回る(物価がプラス)ことをかかげただけに、税収は2012年度の42兆3000億円より8000億円の伸びを見込んだが、これ以上の上積みはいくらなんでも無理。

   そうなると歳出のカットだ。2013年度の歳出は過去に発行した国債の元利払い(国債費)と社会保障費だけで計1兆円以上の自然増が見込まれた。公共事業費は、「防災、減災、老朽化対策という新しいステージに入った」(太田昭宏国土交通相)というように、民主党からの政権奪還の象徴とあって、手が付けられない。そこでまず、総選挙でも公約した生活保護費のカットを3年で670億円と決めたが、第1歩として2013年度は150億円どまり。

   地方公務員の給与削減の効果も約2000億円と「焼け石に水」(財務省筋)。苦肉の策としてひねり出したのが、リーマン・ショック後、毎年度計上してきた「経済対策予備費」(2012年度は9100億円)の廃止だ。景気急変時に素早く対策を打つのが目的だが、海外経済が改善し、緊急経済対策の効果も見込めるとして、当面は必要性が小さいという理屈。 ただ、景気が急変しない保証はなく、また過去、未使用分が補正予算の貴重な財源にもなってきた、いわば「のりしろ」だっただけに、「目先の数字合わせに利用された」(野党筋)との声もある。

12年度補正予算案と合わせると、歳出総額は103兆円

   国債発行を巡る「操作」も繰り出した。財務省は過去5年間、国債金利を年2%に設定してきたが、新年度は1.8%に引き下げた。これによる利払い減で歳出を約3000億円抑制。財務省は「市場の実勢に合わせただけ」と説明するが、金利が上振れすれば予算不足に陥る。

   そもそも、政府・与党も「15カ月予算」を標榜するように、2013年度予算案は既にまとめた2012年度補正予算案と合わせると、歳出総額は103兆円規模、新たな借金も約50兆円に膨らむ。2013年度末の国債発行残高は2012年度末見込み額に比べて37兆円増の750兆円と、過去最悪を更新する見通し。国と地方の債務残高(国債と1年以上の長期借入金の合計)は同35兆円増の977兆円と、国内総生産(GDP)の200%を上回り、悪化したとはいえ100%前後にとどまる米英仏などと比べ、先進国で突出して悪い。

   「大規模な財政出動は、必然的に財政規律への疑念を生じさ、財政健全化に向けた取り組みを同時に示していくことが必要」(経済財政諮問会議民間メンバーの高橋進・日本総合研究所理事長=1月9日の同会議)というのは衆目の一致するところ。安倍内閣も、「2015年度に赤字国債半減、2020年度までに黒字化」という歴代内閣の目標を踏襲すると表明しているが、その具体策が国会論戦でも焦点になる。

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